2011年5月30日1時12分
【動画】京都合唱祭に福島の4校が参加
福島の仲間と1カ月半ぶりに歌った佐藤実奈美さん=京都市左京区の京都会館、岡田写す
福島第一原発の事故で故郷を離れ、関西の高校に転校した女子高校生が29日、京都市であった合唱祭の舞台に立った。ともに参加した福島の高校の仲間たちと1カ月半ぶりの再会。みんなと同じ制服で、復興の願いを込めて歌い上げた。
京都合唱祭(全日本合唱連盟関西支部、朝日新聞社など主催)で、兵庫県立夢野台高校2年の佐藤実奈美さん(16)は、福島県立福島東高校の仲間と並んでステージに上がった。
「一緒に歌う最後のステージ。最高の思い出を作ろうね」。旧友と誓い合って臨んだ曲目は「翼をください」「鉄腕アトム」など4曲。歌い終わって、「本当に幸せです」と笑顔を見せた。
3月まで福島県川俣町で暮らしていた。自宅から30キロ離れた高校にバスで2時間近くかけて通った。放課後は部活、休日はカラオケ。合唱の全国大会をめざし、今秋にはアルトのパートリーダーになるはずだった。
3月11日、合唱部員35人と学校近くのホールで練習中に被災。14日、自営業の父を残して母、妹2人と家を出た。福島市の親戚宅や栃木県のホテルを転々とし、4月に父が用意した神戸市北区のマンションに落ち着き、転校した。
突然の仲間との別れ。「ずーっと大好き(ハート) 逢(あ)いに行くから待っててね」。友だちがくれた色紙や手紙は肌身離さず神戸まで持ってきた。
今月初め、福島東の合唱部顧問から電話があった。「京都合唱祭に出る。一緒に歌おう」。もともと福島東、郡山、郡山東、喜多方の県立4高校は3月下旬に合同の発表会を予定していたが、震災で中止に。そこで主催の京都府合唱連盟が「歌って元気を出して」と出演を持ちかけ、約200人の参加が決まった。
「避難して高校をやめたのに、参加していいのかな」。誘いに喜びつつ、悩んだ。「一緒に歌おうよ」。仲間からメールが何通も届き、福島東の制服をタンスの奥から引っ張り出した。
いつの日か福島に戻り、大学へ進んで看護師をめざそうと思う。「震災で苦しむ人を助けたい。福島を救いたい」。合唱祭でみんなと歌う写真を宝物に、受験勉強に励む。(岡田匠)