2011年5月29日13時6分
兵庫県西宮市が阪神大震災の時に開発した、被災者情報を集約するシステムが、東日本大震災の被災自治体でも活用されている。震災後、少なくとも東北3県で7自治体が導入し、義援金のスムーズな支給などに役立てている。
活用されているのは、阪神大震災直後に兵庫県西宮市が開発したコンピューターのプログラム「被災者支援システム」。市職員が地震から10日ほどでつくり、約1カ月後に稼働させた。
世帯ごとに、犠牲者の有無▽家屋の状態▽避難先▽罹災(りさい)証明書発行の履歴▽銀行口座番号▽義援金の支給状況――など、支援に必要なデータと住民基本台帳のデータを一括して管理。端末に住民の氏名を打ち込んで検索すれば、被災関連情報を瞬時に探し出せ、その都度、基本台帳の情報と照合する手間がはぶける。
16年前、約6万世帯の家屋が倒壊した西宮市では、罹災証明書の発行に当初は最大7時間かかっていたが、システム導入で1時間待ちで済むようになったという。
システムは2006年から無料公開され、09年には総務省がCD―Rに収めて全国の自治体に配布。財団法人「地方自治情報センター」(東京)が普及活動を担い、今回の震災前には30を超える自治体が導入していた。
400人を超える犠牲者がでた岩手県宮古市では、4月下旬から稼働した。担当者は「このシステムがなければ表計算ソフトに被災状況などを一つ一つ手入力しなければならず、手間がだいぶ省けている」と歓迎する。
庁舎が被災した福島県須賀川市は、罹災証明書の発行と義援金支給の担当課が別々の場所にあるため、システムに接続した端末を各所に置き、罹災証明書発行とほぼ同時に、義援金が振り込めるようになったという。
地方自治情報センターによると、震災後は、東北3県の26自治体を含む全国62自治体が導入する準備を整えている。また、民間でも、これに似た機能のシステム開発が進んでいる。
システムを開発した吉田稔・西宮市情報センター長(63)は「システムの導入で業務がスムーズに運べば、被災した住民の負担を減らすことができる。稼働には時間がかかるため、被災地以外の自治体にも早めの導入を勧めたい」と話す。同市では現在、このシステムを用いて、被災地から市内に避難してきた45世帯(110人)の被災時の住所や家族構成、介護支援の必要性の有無などを登録し、支援に生かしている。(五十嵐聖士郎)