2011年5月29日21時36分
東京電力は29日、福島第一原子力発電所5号機で、原子炉と使用済み核燃料の燃料プールを冷やす仮設ポンプが停止して一時的に冷却機能が失われたが、その後、予備ポンプで復旧した、と発表した。停止がわかったのは28日午後9時ごろだが、公表したのは半日ほど遅れた29日午前9時だった。東電は公表時期の判断の誤りを認めた。福島県からも公表の遅れを厳重に注意されたという。
故障したのは熱を海に逃がすのに使う海水ポンプ。ポンプを動かすモーターの電気回路に不具合が生じたためという。29日午前8時から予備のポンプに接続を切り替える作業を進め、29日午後0時50分ごろ、冷却機能が復旧した。
公表遅れの理由について東電は29日夜の会見で、予備のポンプがあらかじめ用意され、それを動かす工事を優先したこと、ほかの緊急の注水手段もあったことなどを挙げた。
だが、予備機への切り替え作業は当初計画した3時間を超えて4時間以上かかった。その間、28日午後5時時点で60.8度だった原子炉の水温は復旧時には94.8度まで上昇した。
結果的には、100度を下回って原子炉が安定する冷温停止状態を保てたが、作業が長引いて100度を超えたら、別の緊急手段の使用も考えていたという。
松本純一・東電原子力・立地本部長代理は「工事が計画通りに進まなかったことを考えると早めに伝えた方がよかった」と話した。
東電は28日夜の段階で、自治体のほか経済産業省原子力安全・保安院には通報したというが、保安院は「直ちに安全に影響はない」と判断し、保安院としても公表を見送った。西山英彦審議官は「様々なバックアップ手段が用意され十分安全確保できる状態。現時点ではこの扱いでよかったと思う」と話した。
5号機は東日本大震災の際、定期検査中で燃料が原子炉に入っており、核燃料から熱が出続けるため、冷やす必要があった。津波で電源や海水ポンプを失ったため原子炉の水温が上昇。海水ポンプ1台を仮設し、3月20日に冷温停止していた。(西川迅、小堀龍之)