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福島のアユ漁解禁延期へ 淡水魚から基準超セシウム続々

2011年5月29日5時9分

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図:淡水魚から基準を超える放射性セシウムが検出された川や湖拡大淡水魚から基準を超える放射性セシウムが検出された川や湖

 東京電力福島第一原発の事故で、福島県内の淡水魚から基準を超える放射性セシウムの検出が相次ぎ、農林水産省と同県は検出された流域で、近く迫ったアユ漁解禁を延期する検討を始めた。セシウムは湖や川に堆積(たいせき)し、淡水魚は海水魚より吸収しやすいとされる。アユ釣りは人気レジャーで、観光に大きな打撃となりそうだ。

 福島県では例年なら、6月初旬から各地で順次、アユ漁が解禁される。農水省と県は5月、淡水魚の検査を開始。いわき市の鮫(さめ)川と夏井川のアユや北塩原村の檜原(ひばら)湖のワカサギ、同村の秋元湖と伊達市の阿武隈川のヤマメ、福島市の摺上(すりかみ)川のウグイで基準(1キログラムあたり500ベクレル)を超える同620〜990ベクレルのセシウムが検出された。

 水産庁によると、淡水魚は海水魚に比べて体内にナトリウムをため込みやすく、ナトリウムに似た性質を持つセシウムも海水魚より検出されやすいという。

 淡水魚は釣りの対象として人気がある。県によると、2009年の解禁期間中、延べ約4万2千人がアユ釣りに訪れた。このうち鮫川は約6千人だった。「渓流の女王」と呼ばれるヤマメやワカサギも人気が高く、観光資源の一つになっている。

 このため農水省などは、出荷停止や摂取制限の指示ではなく、釣りを含めた漁解禁の時期の延期などで対応する方向だ。ただ川の場合、対象の範囲を決めるのが難しい。4月から解禁されたヤマメと、1年を通じて釣れるウグイは、釣りを含めた漁を当面やめるよう、地元漁協に要請した。

 アユやワカサギは広く食用とされるため、農水省内にも「本来は出荷停止が適切」という意見がある。しかし水産物では出荷停止を解除するルールが定まっておらず、停止に踏み切りにくいという。

 今回、基準を超えた魚が見つかった地点はいずれも原発から遠く、檜原湖や秋元湖は約90キロ離れている。それでも高濃度のセシウムが検出されたことについて、農水省は湖や川に堆積しているためとみている。

 海は広く海流もあって希釈されるが、湖や沼、川は閉鎖性が高く水量も限られる。周囲の土壌に積もった放射性物質が雨天時に流れ込んだり、水田の放射性物質が代かき時に水と一緒に湖沼や川に入り込んだりした可能性がある。農水省によると、これまでも農薬が湖沼で濃縮されたケースがあったという。

 海水や海産物の調査は文部科学省などが実施している。一方、川や湖では水産庁と各県が淡水魚の検査を進めているが、川の水の検査は環境省が26日から始めたばかり。水産庁幹部は「川が海へどれだけ放射性物質を運んでいるか、まったく分かっていない。食品としての淡水魚だけでなく、水そのものや水の流れも含めた総合的な調査が必要だ」と話す。(大谷聡)

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