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枝野官房長官の会見全文〈26日午後〉

2011年5月26日21時10分

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 枝野幸男官房長官の26日午後4時の記者会見の内容は次の通り。

 【原発事故をめぐる海水注入の事実関係訂正】

 ――東京電力が3月12日の海水注入の中断について、実は中断してなかったと発表したが、政府の対応は。

 「私のところには今日の午後2時過ぎ、3時前ぐらいだったと思うが、報告があった。海水注入の継続うんぬんということについての是非は別としても、事実関係を正確に把握して報告、伝達をしていただかないと我々も対応に苦慮する。何よりも国民の皆さんが疑問、不信に思われる。これまでも繰り返し申し上げてきているところだが、きちっと正確な事実関係の把握の上で正確な報告をいただきたいということ。そして、また、仮に新たな事実関係が判明した場合には、ただちにこれを報告することというのを、改めて経済産業省原子力安全・保安院を通じて東電には伝えたい」

 ――官邸は現地とも連絡をとってきたと思うが、現地も中断していたと説明していたのか。

 「現地の吉田所長と官邸幹部とのやりとりはそれぞれ、その都度行っていて、私が全部把握をしているわけではない。ただ、私にしても、あるいは海江田大臣、総理などにしても、いったん海水注入があって、それが中断されてという、これまで伝えられていた経緯、いきさつ自体を把握したのがかなり後になってから。

 私自身は具体的に申し上げると、4月下旬か5月上旬、国会での質疑で、こうした時期の事実関係についてお尋ねを受ける可能性があるということで、この件に限らず、時系列的に事実関係を整理されたメモを見て、こんな経緯があったのかな、というのを承知したということで、他の官邸幹部、あるいは経産大臣なども同じような経緯だと聞いているので、その時点ではうかがっていない」

 ――どうして今までこの事実はわからなかったのか。

 「私どもも、先ほど申しました4月下旬か5月上旬ぐらいに私が初めてそのメモを見て、こういったことがあったんだなということを知ったということについても、東電から保安院に報告があったということに基づいたメモだと承知していて、まさに東電でこういうことがあったと報告があったので、それは余程のことがあれば疑ってさらに詳しく問いただすことがあるかもしれないが、そういう事実関係があったんだなということで受け止めていた。

 東電において、なぜそういった間違いになったのかについては、これはさらに詳しく保安院を通じてお尋ねをしなきゃいけない」

 ――東電本店や現地で情報の隠蔽(いんぺい)の意図があったということはないのか。

 「これはまさに今申し上げたように、どうしてこの午後7時過ぎですか、注水が始まって、いったん止めていないのに止まってというような報告に政府に対して、保安院に対してなったのか。

 今回明らかになったように、いったん止めていなかったということが、なぜ早い段階で把握できなかったのかということの経緯については、保安院を通じて東電にもしっかりとお尋ねをしたいと思っているが、少なくとも隠したりする必要性というか、必然性の感じられない話なので、いずれにしてもこの件に限らず、情報の集約と伝達については反省すべき点が多々ある、少なくとも教訓にすべき点が多々あると思っている」

 ――東電の会見によると、時系列にまとめたのは吉田所長には確認せず、東電の本社に残っているメモなどで作成したと。経緯をまとめ直すことは指示しているのか。吉田所長から直接、政府から事情を聴くことはあるか。

 「今回の件を機に、これまでご報告いただいていることについても、どこで調べて確認をしてと。例えば、その事実に関して承知しうる立場にある人が他にもいるならば、それは例えば現地と本社との関係に限らず、そういった方にも確認をする必要があるのではないかということは一般的に言えると思うので、そういった意味ではしっかりと、すでに報告している事実も含めて、事実関係についてさらにしっかりと確認、裏付けを取ることができることについては、やっていただければというふうにお願いしようと思っている」

 ――吉田所長には。

 「現地において、今もかなり相当な緊張感を持って事態の収拾に向けて努力をしていただいていると承知している。むしろ、広い意味での政府という立場からは今後、検証委員会が立ち上がれば当然、吉田所長にも検証委員会としていろいろお尋ねをいただいて、事実関係の経緯などについて調査、検証していただくことになるのかなと思っているので、まずは東電において、そういった形で事実関係、東電としてきちっと確認、整理していただくこと。

 そして、いずれ遠からず検証委員会において対応していただくことで、しっかりとできるのではないだろうかと。収拾に向けた現地の責任者なので、できるだけ負担の小さい中で事実関係がしっかりと確認できるようにするということも重要ではないかと思う」

 ――国際原子力機関(IAEA)での報告に向けて、細野首相補佐官を中心に政府独自で調査すると思うが、細野さんのところで吉田所長から事情は聞かないのか。

 「ここの詳細について私はまだ把握していないので、吉田所長に直接話をこれまでうかがっているのかどうか含めて、細野補佐官をはじめとしてIAEAの報告についての作業チームには確認したい」

 ――午後7時25分の段階で官邸に派遣している東電職員が、官邸で注水について判断できない空気があったと。それで本店と発電所でいったん中断の合意をしたと。官邸で判断できない雰囲気があったことについては、どういう経緯があったのか。

 「これは真水を注入している段階からというか、早い段階からとにかく冷やさなきゃいけない、そのためには水を入れなきゃならないと。普通は真水だが、真水がなければ海水でも、とにかく水を入れて冷やさなきゃならないと。できるだけそれを急ぐんだということについては、この事故発生までは私も原子力について詳しいわけではなかったし、今も決して専門的に詳しいわけではないが、しかし、事故が発生して半日、1日経つ段階では、みんなが共有していた前提なので、午後6時の打ち合わせは私は入っていなかったが、できるだけ早く入れるということが全ての大前提での話があったと私はその後の関係者の話を伺っても理解している。

 そのあたりの意図、意思が東電から官邸に来られていた方などのところで、もし違った認識をされていたとすると、どうしてなのかについては率直に申し上げて、私も首をかしげざるを得ない」

 ――官邸が海水注入を早くしろと言っていた時に、現地は海水注入していたということか。

 「海水注入でも何でもとにかく水を入れないといけないと。特に、私の記憶に残っているのは11日の夜から12日の未明の、ベントがいつだとかいうことでその後いろいろ検証されている時間帯を含めて、水を早く入れなきゃいけないと。何で入らないんだ、早く入れなきゃいけないんじゃないかと。

 ベントと同時にそういったことを繰り返し、その時点から水については官邸の幹部からも東電や保安院などに対しては申し上げている。早く入れなきゃいけませんということは、そうした関係、専門家の皆さんもおっしゃっていたというのが繰り返されていた。水を入れていた時間帯、つまり午後7時以降の時間帯に具体的にその時間帯にそういうことを申し上げていたかどうかは必ずしもはっきりはしていない。

 ただ、一貫して真水が止まれば、真水がないなら海水を入れなきゃいけないんじゃないかということは、少なくともはっきりしているのは午後6時の打ち合わせの段階で、早く入れた方がいいと。だけど東電からのご報告で、1時間半ぐらいかかると、準備に、という報告を受けている。早く入れた方がいいということでお話をしていたということだ」

 ――純粋にタイムラグによるものという認識か。

 「ここは想像の世界にならざるを得ないと思っているが、これは官邸におられた東電の方や保安院の専門家などの皆さんも含めて、事故発生の当初の段階で、とにかく何でもいいから水を入れる、それからベントで空気を抜くと。そのために何とか電源をどっかから持ってくると。あるいは動力源をもってくるということについて、この三つについては常に最優先で、急げ、急げと、なぜできないんだ、ということを繰り返していて、そのことについては共有していたと私はそう思って、少なくともその時点ではいた。

 必ずしもそうではないという話が出てきていることについては、どこで認識のギャップがあったのか含めて違和感を感じている」

 ――今日午後3時に報告があった時、中断の事実はなかったことについて、東電からはなぜそういうことが起こったのかの説明はなかったのか。

 「現地の吉田所長に確認、ヒアリングを行ったところ、止めろという指示はきていたが、現地の判断で止めていなかったとの報告があったというふうに、それが昨日だかに分かったので速やかに訂正するという報告だった」

 ――昨日わかって発表が今日になったことについての説明はあったのか。

 「これについての報告はなかったが、地震発生直後のような時々刻々と状況が変わっている段階では本当に時間単位、分単位でできるだけ早くお伝えすることが求められているかと思うが、ヒアリングの結果をふまえて、翌日直ちに官邸にも、というか保安院にも報告がされ、記者会見でも発表されているというのは、いまの状況のもとでは速やかに隠し立てすることなく公開されたのではないかと受け止めている」

 ――東電の発表していることの信用性が損なわれたと思うが、強制的に説明を求めることはあるか。

 「今回のことが意図的に違った報告がなされていたとか、意図的に報告がなされていなかったということであるならば、そういった対応も必要かなというふうに思うが、今報告を受けている関係と状況を判断すれば、むしろしっかりとした情報の共有や意思の疎通が図られないままに、確認がなされないままに発表されていたということが原因であろうと思われる。

 これについてはむしろ具体的に、しっかり先ほども言った通り、当該事実について認識をしている関係者、できるだけすべて確認をして認識にずれ、齟齬(そご)がないかどうかということを、実務的にしっかりと確認をして頂くということが事実関係を間違いがないかどうかを確認する上では重要だ」

 ――東電の当初発表が内部で虚偽報告あったために起きたとも思われるが、それでも意図的でないというのか。

 「少なくとも東電が従来発表していたことについては、どうも東電が発表すべきセクション、集約すべきセクションのところで意図的なものではなく、現場の所長に対する確認というかそことの意思疎通が十分でなかったということだと思う。そういう意味ではしっかりと関係者全てにきちんと確認をとるということが今回なされていれば、こうしたことにはならなかったのではないかと。今回の事態についてはそう思う。

 もちろん今後、検証にあたってとかそれからまた必要に応じて、今ご指摘頂いたことも視野に、考慮にはいれないとならないとは思っている」

 【首相の経済協力開発機構(OECD)演説】

 ――首相がOECD演説で太陽光パネルを1千万戸つくるといったが、政府としてどう進めるのか。

 「日本の全体のエネルギーの今後のことを考える時に、太陽光発電というのは大変有力な手段であり、現実的な手段でもある。この間も一定の政策誘導によって、一定の普及がしてきている状況にある。ただ、この普及をさらに加速度をつけていくにあたっての具体的な段取りについては、こういう高い目標を踏まえた中で、これまでの施策の成果と問題点、不十分な点についてしっかりと精査をした中で示した方が確実ではないかと思う」

 【同意人事】

 ――日銀の審議委員はどういう判断で起用されるのか。

 「石田浩二氏は今ご指摘の通り長年にわたり三井住友銀行で代表取締役専務、常任監査役なども歴任され、さらに現在は三井住友ファイナンスリースの代表取締役を務めるなど金融、経済に精通した方であるということで高い評価を受けている方だと承知している。

 日本銀行の審議委員には様々な経歴の方がそれぞれの立場で、なおかつ高い見識をもって審議をされることが重要だと思っている。まさに民間金融機関における金融業務の実態をしっかりと承知された上で、高い見識や経営手腕などを評価されていることで、この石田氏が適任ではないかと判断した」

 ――再就職等監視委員会委員について国会提示したが、民主党は野党時代に同委員会の人事を不同意を3回した。今回提示した意味合いは。

 「野党時代にこの同意人事に反対したのは、その時点ではこの委員会の権限の中に再就職あっせん規制の例外としての現職職員に対する再就職あっせんが可能になると、それについて承認ができるという、いわば天下りあっせんの承認機関という役割が担わされていた。私どもの立場としては天下りあっせんの根絶に逆行するということで、そうした仕組みには賛成できないということで反対をした。

 ただ、これについては確か2009年末までだったかと思うが、までの経過措置のもとで与えられていた権限で、その後は天下りあっせんについては全面的に禁止されたし、この委員会の権限に入っていない。ただ、我々としては、改めてこの再就職などについての監視の強力な機関を立ち上げる方向でいたので、これについて検討してきたところだ。

 そして実際、今年4月に公務員制度抜本改革の基本法に基づく改革の全体像を決めたところだが、これに基づく新委員会、つまり再就職監視適正化委員会の設置が早くても2012年度ということで、それまでの間は先ほど言ったような問題点がなくなっているのだから、現行の再就職等監視委員会の監視機能を先行的に評価し活用するということが、いわゆる天下り問題との関係で適切ではないかと判断した」

 【連合の原発推進政策凍結】

 ――連合が原発推進政策を凍結する方針だが、政府の受け止めとどう今後反映していくか。

 「夕刊で報道は承知しているが、連合が具体的にどういった文脈の中で、どういう決定をしたかについてはまだうかがってない。また、民主党にとっての友好団体の一つだが、そうしたところの意見は参考にはさせて頂くが、そのことをもって政府の方針が左右されるものではない。

 ただ、いわゆるナショナルセンターとして各種の業種を問わない、幅広い働く皆さんの連合体というところでのこうした国民的関心の強い問題についてのご意見はしっかりとお聞きし、参考にしていかなければいけないと思っている」

 【首相のOECD演説】

 ――首相のOECD演説で、政府内でどういう議論をした末にこうなったのか。エネルギー基本政策の見直しについて、具体的に議論された形跡はないが。

 「総理が世の中に問う大きな命題については、もちろんいわゆる積み重ね型の議論も必要な場合も少なからずあると思うが、一方で、積み重ねではなくて、総理の強いリーダーシップのもとに方向性をしっかりと打ち出していくやり方も、特に大きな重要な課題についてしっかりと方向性を変えていく、進めていくことにあたっては重要なことだろうと思う。

 そうした基本のもとに、今回総理がリーダーシップ、総理のリーダーシップのもとでこうした方向性を打ち出されたものと認識している」

 【同意人事】

 ――再就職監視委員会の委員長の人選理由について。

 「この方は確か民間の弁護士さんだと思うが、できるだけ公務員の皆さんの地位にかかわることなので、そこに直接的な関係、経緯のある方でない方が望ましいだろうと。なおかつ、一種の適正手続きのようなことを見て頂くということだし、場合によっては事実関係の把握という仕事もあるので、法律関係者が望ましいということも一方の視点である。

 ただ、なかなか常勤の方なので、一般的にそれなりのキャリアのある弁護士などの方だとなかなか国の公務員になるわけで、そういった収入においては大きく下がるであろう中でお願いできる方をみつけるのに、正直苦労したが、まさにそうした今言ったような求められる適正、経歴にふさわしく、なおかつおそらく弁護士として活動されるよりは常勤のこの仕事に就く方が収入などについてもかなり減るんじゃないかなと想像するが、にもかかわらず社会にとって重要な役割であるということでお引き受け頂ける方が見つかったということだ」

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