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福島第一の海水注入中断せず 東電所長、本社に無断

2011年5月27日0時16分

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 東京電力福島第一原発1号機の海水注入問題で、東電は26日、一時中断したと説明してきた海水注入を、実際には中断せずに継続していたと発表した。東電本社と発電所の協議では、海水注入をめぐる検討が官邸で続いていたことから中断を決めたが、福島第一原発の吉田昌郎所長の判断で継続していた。国会でも追及された問題が根底から百八十度くつがえされた。

 東電によると、3月12日午後2時53分に真水の注入が停止したため、午後7時4分から海水の注入を始めた。しかし、午後7時25分、官邸にいた東電の武黒一郎フェローが「首相の了解が得られていない。議論が行われている」との状況判断を本社に連絡。本社と発電所がテレビ会議で協議し、注入の中断を決めた。

 海水注入をめぐって政府と東電は21日、東電が自主的に中断していたとの見解を公表。首相が注入を指示した後の午後8時20分に再開したと説明していた。午後7時4分からの注入は、東電から経済産業省原子力安全・保安院の担当者に口頭連絡されたものの官邸に伝わらなかったとされた。

 だが、こうした経緯は本社の社員や社内に残るメモなどから判断し、吉田所長を含め発電所側に確認していなかった。今月23日の衆院復興特別委員会で、自民党の谷垣禎一総裁が、菅首相の責任を追及する事態に発展。東電が24、25日に吉田所長や発電所の社員らから事情を聴いたところ、中断していなかった事実が判明した。

 吉田所長は、東電の調査に対して「事故の進展を防止するためには、原子炉への注水の継続が何よりも重要と判断して継続した」と説明。新聞や国会で問題になっているうえ、国際原子力機関(IAEA)の調査団が来日したこともあり、事実を打ち明ける決意をしたと話しているという。

 事故時の注水は発電所長の判断で基本的にできることになっていた。東電は当日も保安院に対して午後8時20分に海水注入開始とファクスで通報。今月23日に法に基づき提出した事故分析の報告書にも同様に記していた。

 吉田所長の注入継続の判断について、原子力・立地本部長の武藤栄副社長は「現場の安全を考える上で技術的には妥当な判断」と評価した。だが、その後、長期にわたって事後の報告をしていなかったことから、東電は吉田所長の処分を検討している。

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