2011年5月25日5時14分
東日本大震災で被災した東京電力福島第一原子力発電所3号機で、炉心を冷やす緊急システムの配管が破損した疑いがあることが、24日に公表された東電の解析結果からわかった。東電は「想定を大幅に超える大きさの津波」が事故原因だとしてきたが、解析が正しければ、津波の到着前に重要機器が地震の揺れで壊れていた可能性がある。
解析によると損傷の可能性があるのは、過熱した核燃料が空だき状態になるのを防ぐため、原子炉の水位を保つ緊急炉心冷却システム(ECCS)の一つ。「高圧注水系」と呼ばれる冷却システムだ。核燃料の余熱による水蒸気が主な動力源なので、電源がなくても動く。
東電によると、3号機では3月11日の津波で外部からの電源がなくなった後、別の装置で原子炉を冷やしていたが、翌12日昼ごろに止まった。水位低下を感知して冷却方法が高圧注水系に切りかわると、水位はいったん回復。その後、電池が尽きて動作に必要な弁の開閉ができなくなった。水位はふたたび下がっていき、大規模な炉心溶融(メルトダウン)につながった。
高圧注水系の作動時には、それまで75気圧ほどだった原子炉圧力容器内の圧力が、6時間程度で10気圧程度まで下がった。通常なら、ここまで急速な圧力低下は考えにくいため、東電は水蒸気を送る配管のどこかに損傷があり圧力が下がったと仮定して解析。結果は圧力変化が実際の測定値とほぼ一致し、配管からの水蒸気漏れが起きた可能性が出てきたという。
震災による揺れの大きさについて東電が発表した暫定値によると、3号機では、上下方向の揺れは耐震指針に基づく想定におさまったものの、横方向の揺れは想定をわずかに超えた。
高圧注水系を始めとするECCSは、国の耐震指針で重要度が最高ランクに位置づけられているが、宮崎慶次・大阪大名誉教授(原子炉工学)は、損傷の原因は地震の可能性が高いと指摘する。高圧注水系の配管は建屋内を通っており「津波の直撃を受けて壊れることは考えにくい」という。
1〜3号機は津波で非常用発電機が壊れて継続的な炉心冷却ができなくなり、復旧作業も遅れて水素爆発による放射性物質の大量放出が起きた。東電は津波対策の不備は認めたが、地震対策に問題はないとしてきた。
一方、東電の松本純一原子力・立地本部長代理は会見で「圧力計の誤作動の可能性を疑っている」と述べ、配管が破損したとは限らないとの考えを示した。(小宮山亮磨、杉本崇)