2011年5月24日21時29分
製紙大手6社の2011年3月期連結決算は3社の純損益が赤字になった。東日本大震災で主力工場が被災したためだ。さらに企業が新聞・雑誌広告を減らし、紙の利用が減っている。工場が復旧しても売り上げが戻るかわからない。
印刷用紙最大手、日本製紙グループ本社は、被災した石巻工場(宮城県)の復旧費などの特別損失約628億円が響き、純損益は過去最大の赤字になった。石巻工場はようやく9月末に一部の生産を再開する。
だが、山下勁(つよし)副社長は24日の記者会見で「残念ながら紙が足りないとの声は聞こえてこない」と、複雑な表情だった。今でも他工場などでの代替生産で供給は間に合っているためだ。12年3月期の業績予想は「紙需要の冷え込みが懸念され、適切な予想が困難」との理由で開示を見送った。
三菱製紙は八戸工場(青森県)が24日に一部復旧したが、12年3月期も純損益は赤字の見通し。電子メディアの台頭で紙の広告費が減り続けているためだ。業界関係者は「紙広告はリーマン・ショック前の水準に戻るのは難しいと言われていた。震災前に戻るのも難しいかもしれない」。
北越紀州製紙は18日、初の海外生産拠点となる白板紙工場を中国・広東省に造ると発表した。国内では紙の販売が減ると踏み、海外に活路を求めつつある。
13日に11年3月期連結決算を発表した大王製紙は24日、純損益の赤字額を60億円から80億円に修正した。中国の関連会社関連の損失を12年3月期に盛り込んでいたが、監査法人の指摘で前倒し処理した。(西山明宏)