2011年5月23日13時21分
東京電力福島第一原子力発電所にたまった高濃度の放射能汚染水が海に漏れ出ないように移送している施設が満杯になろうとしている。最初に移送を始めた2号機はあと4日ほどで計画容量に達する見込み。次いで始めた3号機もあと3日しかない。次の対策は6月になる予定で、増え続ける汚染水処理は綱渡りの状況が続いている。
移送計画のきっかけは、2号機のタービン建屋や、そこにつながる坑道で高濃度の汚染水が見つかったことだ。核燃料を冷やすため原子炉に注入している水が、何らかの経路で流れ込んでいるとみられている。2号機全体で計2万5千トンたまっているとみられる。
たまり水は、坑道のたて穴から外へあふれ出たり、復旧作業を遅らせたりするおそれがあった。4月2日には高濃度汚染水が海に流出、問題になった。
そこで4月19日、東電は一時的な保管場所として、近くにある集中廃棄物処理施設のなかの一つの建物(計画容量1万トン)を選びホースで移す計画を始めた。
これまでの移送量は5月23日午前7時現在で計8676トン。1日288トンのポンプ能力から計算すると、27日深夜で1万トンに達する。
しかし、移送を始めた時とたまっている汚染水の量はほとんど変わっていない。タービン建屋地下では4月19日に海面からの高さが3.1メートルだったが、5月23日現在でも3.2メートル。
3号機も5月17日に、集中廃棄物処理施設の別の建物(計画容量4千トン)に移送を始めた。23日午前7時現在で、移送量は2660トン。ポンプ能力は1日480トンで、あと3日で容量に達する見込みだ。こちらもたまっている汚染水量は変わっていない。タービン建屋地下で5月17日の水位は3.34メートルだったが23日現在も3.33メートルある。
東電はこれ以上汚染水を増やさないため、タービン建屋や坑道にたまった汚染水を浄化し、原子炉に戻して循環させる「循環注水冷却」を始める。装置の完成は6月中旬。1万トン分の高濃度の汚染水をためられるタンクも用意するが設置は7月以降になる。
東電は移送が計画容量に達したら中断し、タービン建屋や坑道の水位の様子を見ることにしている。
循環注水冷却装置の完成が遅れたり、装置がトラブルを起こして止まったりすれば、汚染水が再び増える。梅雨で雨水の流入も懸念される。東電は「綱渡りの厳しい状態が続くことになる」としている。(小堀龍之、木村俊介)