2011年5月22日5時30分
農林水産省は、東日本大震災の被災地にある農業協同組合(農協)や漁業協同組合(漁協)への支援策をまとめた。農林中央金庫に協力を求め、融資の焦げ付きなどで経営が悪化した組合に資本を注入しやすくする。同省は、関連法の改正案を今国会にも提出する方針だ。
農地が浸水による塩害を受けたり、漁船が流されたりするなど、農水産業の被害額は約1兆6500億円(19日現在)に上る。岩手、宮城、福島3県の農漁協は、組合員に計8千億円程度を貸し出している。だが、例えば、JAいしのまき(宮城県石巻市)では約1万7千人の組合員のうち170人近くの死亡が確認され、多くが避難所暮らしを続けるなど、被災地では今後、ローンを返せなくなる組合員が多数出てくるとみられる。不良債権が膨らむのは必至だ。
このため、農水省は、国や農林中金などでつくる「農水産業協同組合貯金保険機構」から、被災した農漁協にお金を注入できるようにする。
機構には、農漁協が毎年納める保険料によって一般勘定に約3千億円が積み立てられているが、このお金は、農漁協が経営破綻(はたん)したときに貯金者を保護するためにしか原則使えない。農水省は、破綻前に資本注入ができるよう、機構に「震災特例勘定」を新設。公的資金は使わず、農林中金からの融資で調達した資金をこの勘定に入れて、農漁協に資本を注入する。注入後に農漁協側に損失が生じた場合、一般勘定で穴埋めできるように法改正する。
機構以外にも、農漁協の再編資金などのために農林中金や各組合が負担金を出してつくっている基金が二つある。JAバンク支援協会とJFマリンバンク支援協会が運営する基金で、計約1400億円の準備金がある。このお金も経営が悪化した農漁協に入れることを検討する。(大津智義、小山田研慈)