2011年5月20日0時16分
東北地方を襲った869年の「貞観(じょうがん)津波」や5世紀の大津波が起きた地震のときにも、海岸が沈降したことが、産業技術総合研究所の調査でわかった。当時、沈降した地盤が再び隆起するまでに、数十年かかった可能性があるという。
産総研の沢井祐紀主任研究員らは、福島県南相馬市で、海岸から1.8キロ内陸の田の下に堆積(たいせき)していた砂に混じったケイ藻が、淡水にすむものか海水にすむものかを調べた。何枚もの層になっている砂の堆積した年代とケイ藻を分析した結果、貞観津波と5世紀の津波後は、長く海水につかっていたことがわかり、地盤が沈降していたと推定された。
沈降量は不明だが、東日本大震災のように大きな地殻変動を伴う地震だった可能性がある。地震で沈降した地盤は、いずれ隆起することが多いが、その時期は場所や地震によって異なる。869年の地震後は、海にすむケイ藻がいた層の厚さから、少なくとも数十年は満潮時には海水につかる環境だった可能性がある。
過去の巨大津波を起こした地震の規模の推定は難しいが、当時の地殻変動の大きさや津波堆積物の分布がわかれば、地震の規模を推定できる可能性がある。沢井さんは、調査地点を増やして規模を推定したいとしている。22日から千葉市で開かれる日本地球惑星科学連合大会で発表する。(瀬川茂子)