2011年5月19日11時53分
東日本大震災で多くの死者・行方不明者を出した巨大津波に備えようと、愛知県豊田市の中小企業が、神話「ノアの方舟(はこぶね)」をヒントにした救命装置「伊勢の方舟」を開発している。
騒音対策や耐震補強の設計・施工業「伊勢産業」(社員10人)の山本憲男社長(68)が、東北沿岸を襲う津波の映像に強い衝撃を受け、設計を始めた。「高台に避難できればいいが、津波の到達に間に合わない場合がある。津波避難タワーをつくっても高さ、収容人数とも不十分だ」と動機を語る。
方舟は鋼鉄製だが、中が空洞になっているため、水に浮かぶ。水に完全につかると、空気を取り込む部分に入った木製の球が浮かんで穴をふさぎ、水が入らないようになっている。入り口は内側からネジで密閉して、裏返しになっても床や窓のネジを外して出られるようにした。工場内にプールをつくったり、高いところから落としたりしながら、試作品の実験を重ねている。形は人数によって様々だ。2人乗りは長方形、4人乗りは正方形、6人乗りは八角形など。
これで津波に巻き込まれても助かるのかと聞くと、山本社長は「転がる時に壁にぶつかって痛いとは思うが、生き残れる自信はある」。一般の人から問い合わせも来ているが、「転がっても本当に大丈夫か」「置き場所に困る」という声があるため、内側のクッションを増やしたり、押し入れに入る形にしたりするなどの改良をはかっている。
6月中旬の発売を目指し、価格は2人乗りで40万円前後、4人乗りで60万円前後を予定している。問い合わせは同社(0565・27・3870)。(山吉健太郎)