2011年5月16日20時44分
東日本大震災の被災者が暮らす福島市飯坂町の避難所「パルセいいざか」に、手作りの「子ども新聞」が張られている。ここで避難生活を送る小学5年の男の子が作った。「みんなもがんばったりしてください ぼくもがんばります」とのメッセージは、ともに暮らす人を励ましている。
新聞を作ったのは浪江町の高野啓太君(10)。5月上旬、長引く避難所生活で疲れている人を元気にしたいと、新聞の発行を思いついた。以前、授業で習ったことがあった。
A4判の紙に定規で線を引き、様々なコーナーを作った。第1号となる5月号では、丁寧な字で自己紹介を書いた。
ぼくは浪江町でいました。M9.0のじしんがあってたいへんでしたがみんなもがんばったりしてください ぼくもがんばります。
温かい気持ちになってほしいと思い、末尾には赤鉛筆で大きなハートマークを描いた。
高野君の新聞に、避難生活を送る男性は「先行きが見えず気力がなくなりかけていたが、頑張ろうという気持ちになれた。子どもの前向きな力に励まされた」と話した。
高野君は震災の時、海から約4キロ離れた浪江町の浪江小学校にいた。迎えに来た長兄の優太さん(16)とともに、高台にある自宅に帰った。翌朝、家族9人で近くの津島中学校に避難したが、昼に福島第一原発1号機が爆発。避難を繰り返し、3月13日に福島市の避難所にたどり着いた。
子ども新聞には、海の兄弟を主人公にした自作の漫画「じしんくん」も載せた。「うるさい」「じしんしちゃうぞ」という兄に対し、弟が「いいもん」と返す。その結果、兄弟は津波になってしまう。最後のコマでは、兄弟ともに涙を流し、「ゴメンナサイ」と言っている様子を描いた。
高野君は震災前は週3回、家族みんなで海へ釣りに行っていた。「大好きできれいな海が、黒くなって家を流しているのをテレビで見てびっくりした。本当は優しい海だから、心の中で謝ってると思った」
次は、6月号を発行する予定だ。(貞国聖子)