2011年5月14日11時28分
地震と津波は街を根こそぎにしました。防災の観点から、これ以上被害を出さないため、国などが県外避難や集団移転を促すのは仕方ありません。でも、だからこそいま大切なのは、元いた場所にいつかは戻れるよう最善を尽くす意志を被災者に伝えることです。
犯罪や災害の被害者と対話を重ねてきて強く感じるのは、悲劇の起きた場所こそが被害者の心の回復につながるということです。小学校で児童の命が奪われた事件では、遺族が現場を皆が集える安らぎの場にしてほしいと願った。阪神大震災でも県外避難者が故郷を思い、地元に戻ってきた。今回も避難所で話をうかがって、思いは増しました。津波で孫と娘を亡くした男性は「この場所からは動けない」とおっしゃいました。
今はがれきで覆われていても、亡くなった人々と過ごした最後の場所であり、一緒に笑い、悲しみ、語り合った「つながりの場所」であることに変わりありません。いつかは元の場所に。その原点を忘れてはいけないのです。