2011年5月11日9時31分
東京電力福島第一原発の事故を受け国に中長期対策を報告した国内の原子炉42基のうち、26基が津波をくい止める防潮堤の設置やかさ上げを決めている。
福島第一原発事故を教訓に、経済産業省原子力安全・保安院は3月末、各電力会社に短期的な対策のほか、防潮堤の増強など、1〜3年かかるような中長期の対策の検討も求めた。
これを受け、東電の福島第一、第二原発と、今回の地震で同様に被災した東北電力女川原発(13基)を除く商用原子炉41基と、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の報告書が保安院に提出された。
原発の安全対策上の津波想定は立地条件を考慮、土木学会の基準に基づき、それぞれ決めている。最も高いところは東北電力女川原発(13.6メートル)。低いのは関西電力高浜原発(1.3メートル)。
今回の震災で福島第一原発を襲った津波は、1〜4号機で想定した津波(5.5メートル)を9.5メートル上回る15メートルとされる。各原発では想定の高さに9.5メートルを加え、防潮堤の設置・かさ上げを計画している。
こうした対策を計画しているのは、東北電力の東通、東京電力の柏崎刈羽、中部電力の浜岡、北陸電力の志賀、関電の美浜、大飯、高浜、中国電力の島根の8原発。敷地の高さが海面から数メートルとやや低いところが目立つ。
日本原電の敦賀、東海第二原発は防潮堤の設置を「検討中」としている。
一方、敷地が海面から10メートル以上ある北海道電力泊や、四国電力の伊方、九州電力玄海、川内、「もんじゅ」は計画していない。海水ポンプの予備を確保したり、原子炉建屋の防水化にとどまったりしている。
4月7日の余震では、福島第一と同じ「全交流電源喪失」寸前のトラブルが起きた。東北電力東通原発1号機で外部電源が落ち、回復したものの、非常用発電機も一時すべて止まった。保安院は電力各社に対し、常に2台以上の非常用ディーゼル発電機を確保することなどを求めたが、こちらの審査はまだ終わっていない。(小堀龍之)