2011年5月10日0時35分
中部電力浜岡原発の全炉停止は、中部電だけでなく、東京電力や九州電力にも影響が及んでいる。電力会社は隣接していなくても、「玉突き」のかたちで電力を融通し合っているためだ。
東京電力は発電設備の復旧や新たな電源確保を急ぐ一方、中部電などから100万キロワットの融通を受ける予定だった。ところが、浜岡の停止で中部電は東電に融通できなくなった。東電幹部は「100万キロワットが飛んだら、どこから持ってくるのか」と焦る。
菅政権は東日本の電力需給対策を10日に決める予定だったが、延期の方針。中部電から東電への融通ができなくなり、見通しが変わる可能性があるためだ。
電力各社は、普段から電気を融通し合っている。電気事業者などでつくる電力系統利用協議会が、電力会社間で融通できる送電能力を公表している。
中部電から東電に送ることができる電力は103万キロワット。公表された送電能力は「目安」で、もっと大きな電力を流せることもある。だが、中部電から東電への送電は、周波数を60ヘルツから50ヘルツに変える周波数変換所を通す必要がある。いまのところ103万キロワットが送電の限界だ。
海江田経産相は中部電に原発停止を要請した後、関西電力に東電への電力融通を依頼した。関電から中部電への送電能力は250万キロワット。このうち東電に玉突きで100万キロワットを渡すと、中部電の取り分は150万キロワット。北陸電から30万キロワットの融通を受けると、7月の中部電の供給力は2795万キロワットに高まり、計算上は夏のピーク時に9%の供給余力を確保できる。
もっとも、融通は余力があることが前提。しかし、西日本の電力各社にいま、余力があるとはいえない。
九州電力は、中部電から40万キロワットの電力融通を5月から受けているが、浜岡原発の停止で融通が打ち切られることになった。九電は玄海原発2、3号機の再開見通しが立たない。
定期検査に入った原発は東日本大震災後、まだ全国で1基も運転を再開していない。福井県内に11基の原発を持つ関電は、3基が定期検査で停止中。さらに3基が定検に入る。幹部は「再稼働できないと関電も厳しい」と打ち明ける。
余力の確保には原発の再起動がかぎを握る。それには地元自治体の理解が欠かせないが、福島第一原発の事故で住民には不安が広がっている。