2011年5月8日22時23分
東日本大震災の発生からまもなく2カ月となり、身元が特定できない遺体が増えてきたため、警察庁は、DNAが傷んでいても判定できる、新たなDNA鑑定手法の利用を検討し始めた。おじ・おば、おい・めいなど離れた親族のDNAでの特定の可能性も格段に高まるという。
死亡から日数がたち、DNAの状態は悪くなっている。また、今回の震災は津波の被害が大きく、本人のDNAを家から探し出せない場合が多い。さらに、家族で津波の被害に遭い、親や子のDNAの採取が難しい場合もある。歯型での照合も進めているが、津波で歯科医院が流されていると役に立たない。
そのため、警察庁はDNA鑑定のうち、従来のSTR法に加えて、SNP法の使用を検討している。
警察庁にとって、最大の課題は1件数万円の検査費がかかることだ。刑事局はこのため、「予算に限りがあるため、STR法では判断できない遺体で、SNP法の活用を考えたい」と説明している。
独立行政法人の理化学研究所が、医薬品や治療法の研究のために使っているスーパーコンピューターシステムを使うことになる見込み。
SNPによる鑑定は、2001年の米国の同時多発テロの犠牲者の身元特定で使われたが、理化学研究所のものはこれより精密で、数十万カ所のSNPを比べて個人を特定できるという。
警察庁によると、6日時点で、岩手県、宮城県、福島県で収容された1万4765遺体のうち身元が確認できたのは1万2573体。身元が特定できないまま、市町村に引き渡される遺体はすでに千数百体にのぼっている。
これから見つかる遺体は損傷が進んでいる可能性が大きい。宮城県ではすでに、遺体の取り違え事例が発生している。
東大医学部でDNAを利用した研究をする原一雄医師は「米国同時多発テロの際、米政府は捜査担当のDNA鑑定だけでは対応しきれないと判断し、SNP法を活用した。今回の震災でもDNA研究者は協力できる」と話す。(松浦新)