2011年5月2日17時50分
最高裁の竹崎博允(ひろのぶ)長官が3日の憲法記念日を前に記者会見した。東日本大震災に関連し、「司法も復興のため最大限の努力をしていきたい。被災地の需要を的確に把握し、復興の過程で生じる様々な法的問題に迅速に対応していく」と話した。
1995年の阪神淡路大震災後の紛争例を参考に、竹崎長官は「ローンなど債務の弁済や、企業の経営破綻(はたん)に伴う労働事件、相続、財産管理などの家族間の問題が増加するだろう。原発関連も当然出てくる」との見通しを示した。
原発の設置許可取り消しや運転差し止めなどの原発関連のこれまでの訴訟の大半で、司法は国や電力会社の言い分を認めてきた。司法が果たした役割について竹崎長官は「あらゆる科学の成果を総合し、原子力安全委員会などの意見に沿った合理的な判断がされているかに焦点を当て、司法審査してきたと理解している」と述べるにとどめた。
被災地の裁判員候補者については当面、呼び出し状を発送しない方針。「被災地の生活の実情に細心の注意を払い、過度の負担を求めないようにしたい」と語った。
一方、開始から丸2年を迎えた裁判員制度については「比較的順調なのは、国民の協力のたまもの」としつつ、法曹三者で行き交う書面の量が増えてきた点を問題視。「裁判員は毎回新しい人なのだから、いつも『口頭で、分かりやすい審理を』という原点に返るべきだ」と検察官や弁護人に要望した。(山本亮介)