2011年5月2日9時31分
安置所や火葬場の能力を超える数の遺体が見つかり、東北の被災3県で唯一地中に仮埋葬していた宮城県で火葬にめどが立ち、改葬が始まっている。新たに発見される遺体が減ったうえ、東京都などの施設が火葬に協力し、当初「約2年程度のうちに」としていた改葬が前倒しできるようになったという。
同県などによると、東松島市、石巻市、気仙沼市、女川町、亘理町、山元町の6市町が4月24日までに1900体を土葬した。このうち、東松島市と石巻市で4月上旬ごろから順次、火葬のめどのついた遺族の申し出で、遺体を掘り起こして引き渡し始めた。これまでに約170体が改葬された。連休明けからは申し出がなくても市が火葬まで行う予定だ。他の自治体でも検討が始まっている。
1日朝、小雨の降る東松島市の仮埋葬地。整然と並ぶ墓標がところどころ欠け、掘り返されたばかりの赤い土がのぞく。
隣で作業が続くなか、同市浜市の尾形政志さん(85)の遺体引き渡しと出棺の儀式が執り行われた。花輪などはなく、僧の読経と焼香の簡素なものだ。約20人の参列者の中には、運動靴、ジャージー姿の人も。自宅を津波で流され、避難所から参列した息子の喪主、尾形勉さん(60)は「やっとお骨にできる」とほっとした表情で話した。
遺体は震災の11日後に見つかったが、当時は大混乱のさなか。「山形まで運べば火葬できる」と聞いたが、余裕がなかった。「夢の中にいて外国の映画でも見ているような気分で」、土葬を了承したという。ただ、菩提(ぼだい)寺も被災し、先祖代々の墓も流されている。お骨は当分、別の寺に預けるという。
宮城県によると、県内では1日に約200体の火葬能力があったが、震災後は50体にまで落ちた。その後、東京都が1日100体の火葬を都内の施設で引き受けるなど協力が広がり、徐々に対応できるようになったという。(伊藤智章)