2011年5月1日13時50分
シンガー・ソングライターの南こうせつさん(62)の元に3月下旬、一編の歌詞が届いた。一読した南さんは、「被災地で頑張っている人たちに歌ってあげたい」。タイトルは「愛よ急げ」。2007年に亡くなった阿久悠さんの遺作だった。
「阿久さんはこの震災を知らないのに、不思議なんだよね」
《はるか彼方(かなた) 地平の果てに 愛に目覚めた人がいて かたちある愛 かたちない愛 ともに誰かに運びたくて》
「ボランティアや自衛隊の人たちに、歌いかければ力になるかなと、すぐ曲を書きましたよ」
歌詞を届けた阿久さんの所属事務所の関係者は、「作者の意図は違うかもしれないが、今の状況に合う内容だった。おつきあいのあった南さんの事務所にご一読を、と送った」と話す。書かれた時期は分からないという。
阿久さんとは、互いに無名の頃に知り合った。かぐや姫の最初期に「酔いどれかぐや姫」など歌詞の提供を受けたが、「売れていた時はなぜか、一緒に歌を作っていないんだ」。阿久さんの死後、遺族から託された「風に吹かれて 再会篇(さいかいへん)」に曲を付け、歌っている。「その縁があったから、お話があったのでしょう」
4月29日夜、福岡市でのコンサートで初めて披露した。レゲエのリズムに乗った、明るく親しみやすい曲調。来場者にサビの歌詞を教え、一緒に合唱した。
《丸い地球を 丸く走って 丸い心が いま届けられる》
南さんは最近、仙台市立八軒中学校の合唱部員たちが、避難所で歌を披露している話を知った。スタッフの提案で5月7日、東京・日比谷野外音楽堂でのライブに招き、共演することが決まった。「その時に、ぜひこの曲を一緒に歌いたい」と準備を進めている。(西正之)