2011年4月30日20時24分
東京電力は30日、福島第一原子力発電所に、仮設の防潮堤を6月中旬までに造ると発表した。また、放射能汚染水がたまっている坑道の出口にあたるたて坑もコンクリートで塞ぐ。東日本大震災の余震に伴う新たな津波に襲われて、汚染水が海に流出したり、さらなる水損で復旧作業が遅れたりするのを防ぐのが狙い。
東電は4月17日に、事故の収束に向けた工程表を示した。その第1段階として3カ月以内に高濃度の放射性物質を外部に出さないようにするとしている。第1段階達成のための具体策の一つがようやく示された。
東電は、今後マグニチュード(M)8程度の余震が起きる可能性があると想定。高さ7〜8メートルの津波が起き、標高10メートルの敷地まで勢いで駆け上がるおそれがあると見込んだ。
東電によると、約1〜2メートルの仮設の防潮堤を築く。金網製のかごに石を詰めて積み、遮水シートを挟んで海水が敷地内に浸入するのを防ぐ。防波堤がなく、津波に襲われる可能性が高い敷地南東側の集中廃棄物処理建屋前や、3、4号機のタービン建屋前に造る。
また、津波によって海水が坑道に入り込み、中にたまった放射能汚染水がたて坑の出口からあふれ出て、海に漏れる恐れがある。これを防ぐため、たて坑にコンクリートを詰めて塞ぐ。4号機のたて坑はすでに詰め終わり、他の4カ所を5月下旬までに完成させる。
原子炉建屋が破損している4号機は、使用済み燃料プールの耐震安全性が心配されている。工程表で示していた補強工事に5月上旬に着手。6月中旬までにプール下部に鉄製の柱を入れコンクリートの壁を設置。7月末に工事を完了する。
東日本大震災で福島第一原発を襲った津波は14〜15メートル。標高約10メートルの敷地から4〜5メートルの高さまで海水が達した。その結果、非常用ディーゼル発電機が機器の浸水で動かなくなった。電源が確保できずに原子炉を冷やす装置を動かせず、核燃料の一部が溶け出すなどの被害が出た。タービン建屋にも海水が入り、復旧作業の妨げになっている。
東電原子力・立地本部の松本純一本部長代理は「復旧作業上の最大のリスクが余震、津波。危険性を減らすために防潮堤を築く」と述べた。具体策の提示が遅れた理由について「津波の想定や、がれきが散乱する場所に最も効果的な方法を検討するのに時間がかかってしまった」と話した。(坪谷英紀)