2011年4月30日13時47分
文化財保護法で建物の新築が制限されている特別名勝・松島(宮城県松島町、東松島市など2市3町)の被災者住宅再建問題で、近藤誠一文化庁長官は29日、景観を壊さないなど一定の条件を満たした場合は制限区域内でも住宅の新築を認める方針を明らかにした。
松島の高台の多くは、文化庁の指導でつくった県保存管理計画で建物の新築が認められない「特別保護地区」「1A地区」になっている。地元は今後の津波を警戒し、高台での住宅新築を認めるよう求めていた。
近藤長官は29日、同県庁で村井嘉浩知事と会談。「より安全に住みたいという住民の気持ちを大事にし、個別の事例ごとにきめ細かく対応したい」と述べた。地区ごとの制限緩和ではなく、1棟ごと新築の可否を判断する方針だ。
特別名勝・松島の指定区域では、東松島市で414人が死亡、約1600棟が全壊、塩釜市で2人が死亡、約110棟が全壊、七ケ浜町では約50人が死亡、被災戸数が把握できていないなど被害が大きい。近藤長官らは28日、被害が大きい東松島市の奥松島地域などを視察。高台でも、元畑地だった場所や雑木林などでの住宅新築は景観への影響が少ないとみている。
一方、宮城県は29日、文化庁が住宅新築に柔軟な姿勢を示したことから、5月中にも復興と景観保全の両立を探るため、2市3町の首長、景観や都市計画の専門家らによる検討委員会を設ける方針を固めた。(赤田康和、高橋昌宏)