2011年4月30日8時0分
卒業式の後、被災した町を見下ろす校庭に集まった子どもたち。伊里前小の三浦博之先生は「元通りの町にするのではなく、みんなの力で、以前よりもっといい町にしていこう」と話した=29日午前、宮城県南三陸町、川村直子撮影
東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町の町立伊里前(いさとまえ)小学校で29日、同小と名足(なたり)小の卒業式が時間差をつけて開かれた。「普段の暮らしに早く戻せるよう、役に立つ人になりたい」。23人ずつの卒業生は、そんな抱負を口にした。
3月末で異動した伊里前小の宍戸真一郎・前校長は卒業証書を手渡し、「これでやっと、止まったままになっていた時を進めることができる。晴れて君たちを中学校に送り出せる」。三浦采夏さん(12)は「津波で防具などが流されてしまいましたが、歌津中で剣道部に入りたい」と話した。
卒業式は当初、3月18日の予定だった。亡くなった児童はいなかったが、家を流されたり、親を失ったりした子がいる。両校とも校舎は使える状態になく、授業はストップ。教職員はこの間、安否確認や掃除に追われた。
両校の卒業生の大半が進学する町立歌津中学校は、5月10日に再開する予定だという。卒業式の後、ボランティアが「両校の卒業生同士が友達をつくるきっかけにしてほしい」と、中華料理の炊き出しで交流会を開いた。(見市紀世子)