2011年4月29日20時31分
東日本大震災の発生後初めての中国からの団体ツアー客が29日、福岡市の福岡空港に到着し、5泊6日の九州周遊に向かった。震災で落ち込んだ海外からの観光客を呼び戻すきっかけに、との期待を込めて、福岡では知事や市長らが法被姿で出迎えた。
「ニーハオ」「ウエルカム・トゥ・フクオカ」のかけ声と「熱烈歓迎」の横断幕。29日午後、福岡空港に着いた中国・西安からのツアー客40人は、日本側の歓待に笑顔で応えつつも戸惑うような表情を見せた。
一行の歓迎式で観光庁の山田尚義審議官は「震災で一部地域は大きな被害を受けたが、九州をはじめ多くの地域では通常通り」と強調した。九州観光推進機構会長の石原進・JR九州会長も「九州は震災の地域から1千キロ以上離れていて、まったく安全」と呼びかけた。ツアー客一人ひとりに記念品も用意された。
手厚いもてなしには、わけがある。
昨年、九州・山口の空港や港から入国した外国人は中国や韓国を中心に過去最高の約110万人を記録。今年は九州新幹線の全線開通もあり、さらなる増加が期待されていた。
それが震災で暗転した。シンクタンクの九州経済調査協会が3月下旬、九州の観光施設を調べたところ、キャンセルは141施設で約12万人にのぼり、うち5万人が海外からの客だった。九州に寄港する海外クルーズ船も、4月1日の時点で年間予定の4分の1にあたる31隻がキャンセルとなった。3月に日本を訪れた中国からの客は前年同月の半分に落ち込んだ。
九州経済白書によると、昨年に九州を訪れた外国人の経済効果は1512億円で、1人平均15万2千円を消費していた。地域経済への影響は小さくない。
日本側には、海外からの客を呼び戻したいとの思いが強い。福岡県の小川洋知事は歓迎式で「今回の旅行を周りにお伝えいただき、九州、日本に数多くお越しいただくことを願っています」と頭を下げた。空港を出るバスに手を振り、笑顔で見送った。
ツアーの一行は長崎、熊本、大分を回り、博多どんたくも見物する予定だ。(土屋亮、熊谷徹也)