2011年4月28日23時18分
東日本大震災で広い範囲で破壊された海岸堤防の復旧の指針を、国土交通省などが被災した3県に示した。堤防が破壊された東北の太平洋沿岸は津波や高潮に無防備な状態になっている。梅雨や台風の時期を前に、3段階に分けた対策を実施する。
岩手、宮城、福島の3県では、海岸堤防約300キロのうち約190キロが全壊や半壊。地盤沈下も起きている。
対策の第1弾として国交省などは各県と連携し、梅雨までに土嚢(どのう)を置いたり、盛り土をしたりする。また、大潮で潮の満ち引きが大きくなる季節を迎えることから、壊れた消波ブロックを土嚢の海側に置いて補強するといった対策を取る。
第2弾では、台風の時期を見すえ、高潮や高波に備えて堤防の再建を求める。堤防の高さは、近年で被害が大きかった波の高さから防御できることを一つの目安に挙げた。
これらは応急的な対策との位置づけだ。また、被災した堤防の総延長が長いことから、優先的に対策を取る場所の選定基準も示した。居住できる家屋が残る▽復旧・復興に不可欠な公共施設がある▽農地などで利用できる――といった地域を挙げている。
第3弾は防潮堤や防波堤などの本格的な復旧に進む。被災自治体の街づくりとの調整も必要だ。新たな街をどこにつくるのか、どれくらいの規模の津波を想定するのかも踏まえる必要がある。復旧計画を立てるには数年単位の時間がかかるとみられる。
各県はすでに対策を始めている。福島県河川整備課は「最も警戒するのは台風の時期の高潮。できるだけ早く対応したい」と話す。岩手県宮古市の海岸では、壊れた部分に石を高さ約2メートルまで積むなどした。県河川課は「陸前高田や大船渡など被害が大きい場所は多く、対策を急ぎたい」。宮城県も様々な補強工事をしている。
国交省や農林水産省は「海岸における津波対策検討委員会」を設置し、28日に初会合を開いた。有識者や3県の担当者が、津波の被害を詳しく分析し、堤防などの本格的な復旧について話し合っていく。
国交省保全課海岸室の担当者は「海岸の本格的な復旧は時間がかかる。台風などに備え、被害を抑えられるよう段階的な対策を急ぎたい」と話している。(坂田達郎)