2011年4月28日18時32分
枝野幸男官房長官の28日午後の会見全文は次の通り。
【冒頭】
「私から2点報告する。まず先ほど臨時閣議が開催された。その概要について申し上げる。平成23年度一般会計補正予算、特別会計補正予算、政府関係機関補正予算、それぞれの第1号について決定した。その内容について、財務大臣から説明があった。また、この後行われる野田財務大臣の財政演説案が決定された。さらに東日本大震災に対処するために必要な財源の確保を図るための特別措置法に関する法律案が決定された。その他、法律の公布が決定されている。原子力賠償関係について報告申し上げる。本日午後、原子力損害賠償紛争審査会が開催され、損害の範囲に関する第1次指針がとりまとめられた。避難指示や出荷制限等によって生じた避難費用、営業損害、財産価値の喪失等が第1次指針の対象となっている。この第1次指針の内容について審査会の事務局である文部科学省が本日17時、記者ブリーフを行うので、詳細はそちらでお聞きを。審査会において今後風評被害に苦しむ農林水産業者等の方々の損害も含めて、さらに精力的に審議を頂き、第1次指針から間を置くことなく、第2次指針がとりまとめられていくことを強く期待している。すでに損害が発生しているものについては被害者には損害賠償請求権が生じている。東京電力においては本日、損害賠償問題専用の窓口を設置したところだが、今般、策定された第1次指針を踏まえ、風評被害を含めたすべての損害を受けた方々の損害賠償請求に関して、手続きを進めて頂きたい。避難住民の方々はもちろん、農林水産業者や中小企業者の方々を始めとして大変厳しい状況に置かれている被害者の方が出来る限り速やかに適切な賠償を受けられることが重要である。このため、賠償の確実な履行を確保する政府による援助を含めた全体の仕組みについての検討も急いでまいる。すべての損害賠償請求の手続きが完了し、賠償金のすべてが実際に支払われるまでには一定の時間がかかることが見込まれる。こうした中、まず今回の第1次指針の対象となっている避難住民や出荷停止等を余儀なくされた皆さんを始めとする方々には、東京電力によって可及的速やかに仮払いが実施されることが重要である。東京電力においても、この指針発表を受けて仮払いの実施について検討するという風に承知をしているが、検討にとどまらず、直ちに実施をして頂きたいと強く政府としても求めていく。私からは以上」
【賠償指針】
――第1次指針に対する評価と2次指針以降に期待する点は。
「これは独立の審査会をわざわざ設けて政府が直接に指針を定めるのではなく、第三者性をもったところで指針を定めておいて頂いているので、そのお願いをしている政府の側から評価をするということよりも、むしろ大事なことはこの第1次指針を踏まえて、本当に速やかに東京電力において、仮払いを始めて頂くこと。実際に支払いをして頂くこと。このことが何よりも重要だ。このことに対して政府として強く東京電力に対して求めて参りたい」
【仮設住宅への入居】
――総理は仮設住宅への全希望者の入居について「お盆の頃」と言ったが、国交相は会見で「そういう見通しは立っていない」と言っている。政府として「お盆の頃」という見通しは立ってないのか。
「総理の発言自体、正確に記憶しているわけではないが、資材等の確保、人員等の確保、建設場所の確保と、それぞれにおいていろんなハードルあるが、少なくとも資材の確保等について政府として最大限の努力を払って、できるだけそうした時期に入って頂けるようにということに向けて最大限の努力をしているというのが現状だ」
【東電の賠償】
――東京電力の仮払いを「速やかに」というのは、具体的な時期の考えがあるのか。
「まさに早ければ早いほどいい。特に事業者については、収入が無くて支出だけが出ている状況だ。避難されている皆さんの生活の最低限のものは100万円の仮払いが始まっているが、これもできるだけ請求された方について支払いが直ちになされることが求められている。そういう意味では本当に出来るだけ早く、一分一秒でも早くというのが政府として求めるところだ」
――強い口調で言うのは、何か東電が渋っているのか。
「直接的には別にそういったことは聞いてないが、まさにこれは指針を定めることが目的ではない。指針に基づいて支払って頂くことが目的で、審査会もできるだけ急いでということで指針を出したので、少なくとも第1次指針に関しては、まさに東電からのスピード感が求められる状況だということだ」
【政府・民主幹部会合】
――今日の政府・民主幹部会合の議論の中身は。
「今日、補正予算案が閣議決定して国会に出される。各党に理解頂いて国会の日程を含めてご協力頂いているが、これの早期成立に向けて、さらには基本法については亀井国民新党代表はじめとしていろいろと各党間で協議、相談を頂いている。それについての状況の報告を受けた」
【復興基本法案】
――基本法の扱いについて何か結論を得たのか。
「従来の方針と特に変わりはない」
――週半ばに基本法の姿を示す方針は了解を得られたのか。
「特段、従来の方針と何か変わったことを決めていない」
【福島原発の防波堤設置案】
――福島第一原発の吉田所長がインタビューで、「震災時と同じ程度の津波が来るのは致命的で急いで防波堤をつくらないといけない」と言った。現状、防波堤や津波対策の状況はどうなっているのか。
「この間も余震によっての対応、当然余震がまだ可能性がある中では、津波に対する対応も必要だ。当然そういうことも考慮にいれて対応を最大限しないといけない。詳細については統合本部でできることについての検討を進めていると承知している」
――政府として防波堤について把握していることは。
「余震や余震による津波の対策に万全を期すようにということは当然政府の姿勢だが、具体的な資材の調達とまでなると、それは統合本部では情報交換はしているかと思うが、私のところまで報告が上がる性質のものではない」
【米上院軍事委員長との会談】
――先ほどの米ルース大使との会談の内容は。
「ルース大使と会談したというよりも、アメリカ上院のレビン軍事委員長と上院軍事委員会の人事小委員長であるウェッブ上院議員の2人が表敬に来られた。それに大使が同行された。両氏から東日本大震災に対するお見舞いの言葉や、この間の日本の被災地の皆さんの大変秩序だった対応についての敬意を表する旨の言葉を頂いた。私からは米軍はじめとする協力について感謝を申し上げた。両氏はグアム、沖縄を訪問して普天間の移設問題について意見交換をされてきているところ。私からはこの問題に関して、昨年5月の日米合意を踏まえて取り組んでいくと。沖縄の皆さんの理解を得るべく最大限の努力をしていくと伝えた」
【学校での屋外活動】
――福島の学校で屋外活動を制限する文科省の放射線量の基準について、日弁連の宇都宮会長が「放射線管理区域で定める基準より甘く問題がある」と、見直しを求める会長声明を発表したが。
「日弁連のトップの方からそういう意見が出されているので、そういう意見も踏まえて、改めて安全委員会などの専門家の意見を聞いてみたい」
【復興基本法】
――復興基本法について、国民新党の亀井代表が5月2日の閣議決定に反対しているが、政府は連休中に閣議決定したいということでいいのか。
「従来の方針が何か変わったことを今日の昼決めたことはない。党の側においては、亀井代表と連携協力をして野党の理解を求める。あるいは玄葉政調会長が石破政調会長との間で理解を求めるべく努力する。こういうことについても変わっていない」
【主権について】
――今日はサンフランシスコ平和条約が発効した日だが、主権を回復して60年たったが、あらためて主権をどうとらえているか。
「現在の国際社会においては国家という単位が国際社会の構成単位になっている。それぞれの国家において、その国家の内部で決めた国家としての意思というものが、国際社会の構成要素になる。その意思決定が主体的に決められるということの重要性は、国際社会の構造がそうである限りは変わらない。従って、国家の行政権限を預かる立場としては国家の主権というものがしっかりと確保されるということがあらゆる国家活動、行政活動の大前提である」
【成長率の下方修正】
――日銀が展望リポートを発表し、国内総生産(GDP)成長率を下方修正した受け止めと、景気対策を検討するかどうか。
「日銀は日銀としての判断に基づいてリポートを出した。政府としては復旧復興というものに全力であたっていくということの中で、復旧復興にあたっては様々な事業が行われる。そのことによって経済全体についても一定の成長を確保していくことにつなげていきたい」
【一時帰宅】
――警戒区域への一時立ち入りについて、長官は連休中にも行いたいとの見通しを示したが、地元自治体からは政府から話はなくて連休中は不可能という声が上がっているが、地元の反発をどう受け止めるか。
「私が早ければ連休中にも、と申し上げた時も、地元の皆さんの協力を頂かなければならないので、地元の皆さんと相談、調整を進めていくということを前提に、早ければできる可能性があるということを申し上げ。国が単独で出来るものではない。地元の皆さんと相談の上で最終的にいつから実施できるか決まっていくものと前回申し上げた。地元もいろいろな自治体がある。順次それぞれの事情をうかがいながらできるだけ早くということで進めていきたい」
――政府発表と現場との乖離(かいり)が生じているようだが、情報伝達で問題はないか。
「少なくとも一時立ち入りについては私、発表していない。お尋ねに対して、早ければ連休中にも、ということを申し上げたつもりだ。それは最終的には地元の皆さんとの話を踏まえた上でいつからかが決まる。一方的に連休中にスタートさせるということは申し上げていない」
――現時点でも「早ければ連休中」という見通しか。
「それは地元の皆さん、自治体の皆さんとの話、調整がもしついて、地元の自治体がいくつもあるので、対応してスタートできるというところがもしあれば、それはできるだけ早いほうがということは自治体の皆さんもそう思っていると思うので、ぎりぎりまで出来るだけ早くということで調整したい」
【嘉手納基地騒音訴訟】
――きょう米軍嘉手納基地周辺の住民2万2千人が原告となった飛行場の騒音問題の訴訟が起きたことについて、どう受け止めるか。
「報道は承知しているが、まだ訴状が送達されていないので直接のコメントは差し控えたい。ただ、いずれにしても、騒音問題を始めとして、沖縄の基地問題にかかる負担の軽減に向けてさらに努力をしていかなければならないと思っている」
【かりゆしウエア】
――クールビズに関連してかりゆしウエアの導入を提案したそうだが、具体策は。
「例年だと6月のクールビズスタートの時か直後ぐらいに閣僚も閣議などでかりゆしを着て下さいということも含めて、かりゆしウエアの普及に向けた努力をしてきている。今回、新たにということを現時点で特に考えているわけでない。1カ月前倒しなので、軽装とはいってもまだ東京はかりゆしではちょっと寒いかなということもある。まずは例年通りのことを前提にしながら、さらにかりゆしウエアの普及に向けてできることがないか、検討してみたい」
【浜岡原発3号機】
――浜岡原発3号機が7月までに再稼働される可能性がある。再稼働の是非についてどう考えるか。
「これは中部電力の経営指針か何かで出ていることだと思うが、政府の立場としては、様々な緊急安全対策も含めて、安全対策がしっかりと万全に取られること、あるいは地元自治体の意向というのが福島の事故を踏まえてますます重要になっている。そうしたことを踏まえて慎重に検討して参りたい」