2011年4月28日3時2分
福島第一原発事故を受けて、大阪大や広島大、東京大などの研究者ら約300人が5月中に詳細な土壌の汚染地図作りに乗り出す。福島を中心に1500のエリアで、最大1万地点の土を採取し、汚染の実態を明らかにする計画だ。地図は避難区域の設定などに役立ててもらう。文部科学省も、詳しい汚染の実態把握には専門家の助けが必要として活用していく考えだ。
地図作りは、大阪大核物理研究センターの藤原守准教授や広島大原爆放射線医科学研究所の星正治教授、東京大原子核科学研究センターの大塚孝治教授らが呼びかけ、全国の核物理学や環境放射能、気象の専門家らが協力する。チェルノブイリ原発事故の環境調査で実績のあるロシア放射線医学研究所の協力も得る。
チームは5月中旬ごろに、福島第一原発から西へ60キロ、南北100キロの範囲を2キロ四方、1500エリアに分けて調査。1エリアあたり5〜7地点の土を採取して、ヨウ素131やセシウム137、ストロンチウム90などを測定し、2キロ四方の濃度を地図に落とす。原発から20キロ圏内の警戒区域でも調査する計画で、政府と詰める。
土壌の汚染は地形や気象の影響を受けるため、同じ地域でも少し離れただけで値が大きく異なる。避難区域の設定など、きめ細かな対策には、詳細なデータが不可欠だ。
当面、数カ月ごとに調査を続け、地図を更新していく計画だ。福島はチェルノブイリに比べ、地形の起伏があるほか、雨が多く土壌が流されやすく、時間を追って、汚染度が変化しやすいと考えられるからだ。
また、住民への健康調査データをもとに、土壌汚染との関連も調べていく。
チェルノブイリ原発事故では、セシウム137の土壌汚染の詳細地図が出来たのは事故から3年後だった。半減期が短いヨウ素131の測定は不十分だったため、甲状腺がんの発症と、甲状腺に集まりやすいヨウ素131の汚染度との関連など、健康影響の評価には限界があった。
文科省も土壌汚染の地図作りを進めているが、現在の調査地点は53カ所。同省は「研究者と連携し、効率的に地図を活用したい」と調査手法などの協議を進めている。
大阪大の藤原さんは「将来のがん発症と放射性物質のリスクを検証するには、早期の調査が必要だ。土壌マップの基礎データがあれば、住民が納得できる避難区域の設定にもつながる」と話す。(岡崎明子)