2011年4月26日12時31分
枝野幸男官房長官の26日午前の記者会見は次の通り。
【冒頭】
「私から3点報告する。まず本日の閣議の概要について、一般案件4件と法律公布、法律案、政令、人事が決定された。農林水産相から平成22年度森林林業白書について。私から天皇・皇后両陛下の宮城県、岩手県、福島県、行幸啓について申し上げた。閣僚懇談会において私から、復興アクションキャンペーンの実施について申し上げた。ただいまのうち、まず天皇・皇后両陛下の被災地の行幸啓について、閣議において私から次のように報告した。天皇・皇后両陛下には、これまで東日本大震災にともなう避難者、被災地お見舞いのため東京都、埼玉県、千葉県および茨城県へ行幸啓になったが、4月27日(水)に宮城県へ、5月2日(月)に岩手県へ、5月11日(水)に福島県へ行幸啓になる。両陛下におかれては地震発生以来、大変お心を痛められ、できるだけ早い時期に被災地をお見舞いになるとともに、救援・復興活動に従事している関係者をおねぎらいになりたいとのお気持ちであったとうかがっている。このたび、地元の地方団体はじめ関係機関と協議のうえ、それぞれの日の行幸啓となった。当日は限られた時間内に避難生活を送っている、できるだけ多くの人々をお見舞い頂くものと承知している」
「次に復興アクションキャンペーンの実施について、本日の閣僚懇で私から、東日本大震災による風評被害の発生、買いだめによる一部商品の品不足、自粛ムードによる経済活動の停滞への懸念などに対処するため、復興アクションキャンペーンを4月28日より実施する旨、発言をした。このキャンペーンは日本全国の消費者の様々な行動を、復興アクションとして東北3県など被災地の応援につなげることを目的に、民間団体・民間企業が中心となって展開する活動を政府として後押しするものであり、関係府省庁の連携した取り組みが必要であることから、関係閣僚に対し協力をお願いした。本キャンペーンの詳細については内閣府政府広報室に問い合わせ頂きたい」
【電力需給】
――電力需給について、先週に大口需要者の25%減の目標を、今週の早い段階で変えるなら知らせるとの話があった。これについての検討状況は。また国民生活への影響がある病院や冷凍関係のものを除外する考えはあるのか。
「電力の需給関係については、先週東京電力からさらなる供給の上積みについての報告があった。それを踏まえて需給計画、需給対策についての報告を整理をと思っている。ただ、特に供給の上積みについてしっかりと今精査、確実性について精査しているところだ。それを踏まえ、今週前半という風に思っていたが、若干その精査の方が重要であるのでずれ込む可能性はあるかなと思う。その中における需給対策としては、一義的には企業を含めて民間の皆さんの自主的な取り組みを前提に組み立てていこうということで何度も申し上げている。それは今指摘あった病院や冷凍関係、例をあげればいろいろあるがそれぞれの業種業態によって、どういう形の節電のやり方が現実的かつそれぞれの事業、病院等については患者さんの生命にもかかわる問題なので、どういうやり方がいいのかというのは一番それぞれの当事者の皆さんが熟知しているので、それを踏まえた中で進めていこうということだ。たぶんお尋ねは、法に基づく使用制限等の話かと思うが、それについてそのこと自体の適用の有無を含めて検討している段階だ。それに例外を設けるかという以前の問題として、使用制限そのものを強制力もって適用するかどうか自体、今申し上げた自主的な協力というのが前提の中で、検討の途中であるというのが現時点の状況だ」
――自治体の取り組みの一つとして、荒川区が節電マイレージというのをして、節電したらエコポイントのような形で還元する取り組みをしているが、どう評価するか。また政府も節電をお願いするだけでなくその対価を設けるようなことは検討しているのか。
「それぞれの地方自治体において、企業などにおいても様々な自主的な協力、努力を頂いているとの報告は適宜受けている。大変ありがたいと思う。国も節電への協力に対するポイントをつけるとか、そういう促進策は先日も上田清・埼玉県知事からも提案を頂いた。需給計画全体の構造をできるだけ早く示した上で、特に個人の皆さんに協力を求めるのはなかなか難しいところもあるので、そのうえで、ゼロベースで検討したい」
――東京証券取引所やソニー、ユニチャームなどで「サマータイム制度」の導入を表明しているが、どう評価するか。
「今のような企業単位での稼働時間、就業時間帯をずらして頂いてピーク時電源の調整をして頂けるのは大変ありがたい話だ。おそらくずらすだけなら、事業活動そのものへの影響は小さい。そういった意味では大変ありがたい取り組みだ。若干、労働環境等働く皆さんにとっての影響が出るかと思うので、そこについても十分配慮のうえ、進めて頂けるのではないかと期待している」
――節電効果は期待されるが、一方で取り組みが一部にとどまると、取引先との時間のずれで結局、労働時間の増加につながるとの懸念も出ているが、国全体としてサマータイム制度を導入する考えはあるか。
「検討の対象ではあるが、ここは色々考慮しないとならないところがあって、すべての皆さんが一斉に終業時間をずらすと、ピークがずれるだけにとどまる可能性もある。それから、全体としての時計の針を動かしてしまうということだと相当なコストがかかるのも間違いない。それの検討もしないとならない。個別企業や業種ごとにやって頂くということについては、今のような問題点がない。一方で指摘頂いた通り、取引先との関係等についての事情もあるので、正にそれに対する影響の度合いというものをそれぞれの企業なり業界・業種ごとにいろいろ相談頂いて、その中で事業への影響の少ないやり方を、今の始業時間をずらすことを含めて最も効果的なものをそれぞれに判断頂く方が現実的であるし効果的である、影響も少ないというふうに思っている」
【エネルギー政策】
――今日の閣僚懇で、総理から来月のG8サミットに向けて日本のエネルギー対策、原子力対策について将来構想を示したいという考えの表明があったと思うが、政権として具体的にいま検討しているのか。
「ずっと言ってきている通り、原発事故についての検証をしっかりと行っていく。検証を行うにあたっては、現時点でも残念ながら事故は現在進行形であるので、どのタイミングからどう検証を始めるのかはなかなか難しいところがある。一方で、G8をはじめとして国際社会からも日本の対応ぶりということについては注目をされている状況なので、当然事故の状況とか情報提供を含めてしっかりと国際社会に対して行っていく一方で、何らかの形で現時点までの状況を踏まえた日本政府としての考え方を国際社会に示す必要があるのではないかという問題提起を頂いた段階だ。事故への対応に全力を注ぐ中で、どの程度のところまでできるかはまさにこれからの課題だ」
【チェルノブイリ25年】
――チェルノブイリから25年になるが、教訓が生かされたと考えるか。福島の事故がチェルノブイリほど深刻でないとの認識に変わりないか。チェルノブイリに至る事態になる可能性についてはどう考えるか。
「チェルノブイリとの比較については、私も気を付けて発言してきたつもりだが、深刻度というよりも事故の種類が違うということははっきりしていることだと思っている。稼働中の原発が大きな爆発を起こして、広範囲にわたって高濃度の放射性物質が一時に拡散したチェルノブイリのケース。そのことで作業員も亡くなり、周辺地域の皆さんも相当の高濃度の被曝(ひばく)をされたチェルノブイリのケースと、今回は残念ながら、放射線物質の放出量ということではその10分の1位のレベルに達しているが、少なくとも原子炉の中の爆発等は食い止めることができて、放射性物質の拡散についても、チェルノブイリと比べれば圧倒的に範囲等が小さいというような事故の態様に大きな違いがある。作業員の方を含めて大きな被曝で命を失うような人は出ていない。周辺住民にも大変な迷惑、不便をかけているが、20キロ圏内の皆さんには早い段階でかなり無理をお願いして避難して頂いて、その結果大きな被曝をしている周辺住民の方もいないという状況にある。何とか、こうした事故による放出量は多いが、周辺の皆さんの特に健康に与える影響を及ぼさないという状況の中で収束させなければいけないという思いの中で、色んな無理もお願いしている状況だ。25年前のチェルノブイリの事故の経験が生かされているのかということについては、むしろ専門家の意見、判断を待たなければならないが、どういった放射線量でどういった健康被害が出るのかということは、チェルノブイリ等を踏まえた様々な調査、研究が人類全体としての共有の財産・知見になっている。少なくともそうしたことが今回の避難等の判断をする上での間接的要因になっているのではないかと、専門家ではないが認識をしている」
【首相訪米日程】
――閣議前に外相、防衛相と会っていたようだが、総理訪米の検討状況は。
「従来から申し上げている通り、今年の前半に訪米をする方針に全く変わりない。具体的なことはまだ申し上げる段階ではない。今日、外相、防衛相と打ち合わせをしたのは、震災もあって沖縄の基地問題等について、少なくとも政務レベルで必ずしもこの1カ月余り、十分な打ち合わせができていなかったという中で、事務レベルでは私の所管の振興策についても作業を進めている。今日は振興の話ではないが、情報交換と情報共有を図った」
【東電社長の自衛隊機輸送】
――震災当日に東電社長が自衛隊輸送機で名古屋から東京に戻る途中、防衛相の判断で引き返したという報道の事実関係は。
「震災が発生した3月11日に、防衛省に対して東電社長を名古屋空港から東京まで輸送して欲しい旨の打診があったこと、一方で防衛相は被災地の状況にかんがみ、被災者救援のための輸送を最優先すべきだと指示していたこと、結果的に被災者の救援が最優先であるという判断に基づいて、東電の社長の輸送は行われなかったということの報告を受けている。3月11日の夜の状況なので、自衛隊、海保、警察を始め、特に夜間になって、空からの被災者の救援に総力をあげていた状況なので、被災者救援のための輸送を最優先すべきだという防衛大臣の指示は妥当であったと考えている」
――輸送は行われなかったのか。
「事務方が速やかに輸送に着手すべく準備を開始したのと、防衛大臣の報告、指示との順序の中で、結果的に名古屋空港を離陸したばかりの航空機が引き返すことになったと承知している」
――名古屋は被災地ではないので、引き返す必要はないのでは。
「報告を受けているところによると、飛行機は離陸したばかりであったという報告を受けている」
――総理や官房長官に情報は入っていたのか。
「東電の社長が東京にいなくて、東京に戻ろうとしているという報告と、今申し上げたやりとりがその後にあったという報告はあった」
――報告受けたのはいつだったのか。
「戻ってきたということで、それなら高速道路は動いているよね、というような話はした記憶がある。飛行機は離陸したが、一方では防衛大臣から被災者の救援を優先すべきだという指示もあったので戻った、ということについては戻った後、何分後かは正確に覚えていないが、そういういきさつがあったということの報告は少なくとも危機管理センターにはあった」
――東電社長がその日に戻れなかったことが、意思疎通不十分だった一因では。
「東電の社長が被災地ではなく、名古屋におられたので逆に言うと少なくともその時点で東名高速とか、東海道のラインの交通インフラが遮断をされているという状況ではない。私は事後的に今のようなやりとりがあった後、報告を受けたが、東電の社長が動いてなくて陸の孤島状態ならば、原発事故も抱えているので自衛隊の飛行機を頼むというのは理解できないことではないが、名古屋―東京間なので、これは車を飛ばしても走れる状況なので、なぜ自衛隊に頼み、自衛隊も大臣の決裁も受けずに飛行機がいったん飛び立ったのかという方を不思議に思った」
――車で早く戻れと指示は出せなかったのか。
「当然そうするものじゃないか。民間企業の東電の社長が名古屋にいて一刻も早く帰るべきだと、一刻も早く帰りたいから、当然震災の状況ご承知でしょうから、飛行機による救援、救難をお待ちの方が東北地方にたくさんおられるという状況の中で、自衛隊機を飛ばしてくれという要請があるぐらいの状況ですから、当然、自衛隊機が飛ばないんだったら自動車を飛ばすとかということは、当然お考えになっていると私は思った。むしろ、それが常識じゃないか」
【小沢元代表らの動き】
――今日昼に小沢元代表や鳩山元総理に近い議員が集まり、菅政権が国民の支持を失っているのは明らかとの会合を開く予定だが、党内からこういう動きがでていることをどう見ているか。
「そういった事実関係があるのかどうか確認していない。予測に基づいて申し上げる性質のものではない」
――閣僚懇で総理から選挙結果について話があったと聞いているが。
「閣議、閣僚懇については基本的には、私も情報公開法をずっと推進してきた立場だが、そこでのやりとりは全面的に話をするということでは、閣議、閣僚懇の性格上、十分な役割は果たせない。今のような性質の種類の話があったということの紹介にとどめたい」
【日・EU首脳会議】
――日本と欧州連合(EU)首脳会議が5月下旬に開催する方向で調整、との報道あるが、どういう検討状況にあるのか。
「こういう震災を受けた状況なので、できるだけいろいろな震災について協力を頂いた国々との外交関係が重要だと思っているが、いま指摘を頂いたような具体的なことについて、何か決まったとか決まりそうだという報告を外務省から受けていない」
【避難区域への立ち入り】
――一時立ち入りについて、役場など公益的な場所については一両日中にも実施するという話だったが、今日できそうなのか。
「現地の対策本部が主に現地とやっている。もう具体的なオペレーションなので、そこまで詳細な報告はあがっていない。ただ逆に、昨日も指摘頂いたが、当該地域の市町村は役場の機能が失われたり、それ以外の業務も大変多い中で、役場の力では一時立ち寄りの行動について対応しきれないという声は少なからず上がってきており、昨日申し上げた通り、地元の地理的条件とか、住民の状況とかについてはいわゆる土地勘のない人間だけで対応できるのかという問題があるが、最大限、自治体の負担の小さい中で、住民の皆さんの一時立ち入りができるようにとの指示を改めて出したところだ」
【東電の役員報酬削減】
――東電が昨日、役員報酬カットだけでなく、組合員にも給与2割カットと発表したが、どう評価しているか。
「東電においては今回の事故による損失をしっかりと補償していくということのために、最大限の企業努力をして頂かなければならないし、それが当然のことだろうと思っている。一方で、もちろん原発事故の収束とか補償等については国として相当な関与というか、共同作業に近い形で進めてきているところだが、一方でどこまで今のような経営努力に直接踏み込むのかというのは、軽々にはちょっと申し上げにくい話なので、そうした努力をされていることについて認識し、現時点での一定の評価をするということにとどめたい」
【被災地の受け止め】
――永田町の政局が被災地にどう受け止められると思うか。
「当該指摘頂いた会合とは全く無関係に、昨日も申し上げた通り、特にまず、私はいま政府の一員であるので、政府としては日々、時々刻々、震災の避難をされている方、影響を受けられた方、事故の収束、事故の影響を受けられた皆さんに対する行政対応は、全く間断なく進めていかなければならない状況にある。もちろん政治家なので、いわゆる政局といわれることに無関心ではいけないという思いも、ほんのちょっぴりないわけではないが、そのことにエネルギーを割く余裕は全くないので、あえて申し上げればそういったことについてコメントする状況ではない、というのが私の立場だ。そのことについては、政府の一員であるか、そうでないかにかかわらず、多かれ少なかれ同じような状況と認識ではないかと、私はそう信じたい」