2011年4月26日5時5分
福島第一原発事故による海の放射能汚染を、無人の海洋観測艇で監視する計画を、東海大の千賀康弘教授(海洋計測学)らが進めている。人が被曝(ひばく)せずにデータを集められるのがメリットだ。24時間連続で海水と大気の放射能を同時に測定する。結果はインターネットで公開し、誰でも閲覧できるようにする計画だ。
この無人観測艇は、東海大や東京大などが2000年に開発した「かんちゃん」(全長約8メートル)。軽油で発電した電気で航行する。速度は時速5〜6キロとゆっくりだが、最大で4千キロ程度、約1カ月連続航行できる。
全地球測位システム(GPS)で自分の位置を確認しながら進み、あらかじめ設定した調査ポイントを自動的に回って測定をする。進む方向や速度は地上から人工衛星経由で遠隔操作も可能だ。01年には三宅島沖で大気中の火山性ガスと海洋観測を同時にこなした。
計画では、原発から半径30キロ圏内の海上のうち、放射線量が高く、これまで十分な調査ができなかった海域を中心にジグザグ航行を繰り返すなどで観測する。
「かんちゃん」は静岡市清水区のマリーナにあり、04年以降、観測に使っていなかったことから機器の点検や整備を進めている。すでに海水の塩分や水温、風速や風向などを測るセンサーは搭載されているが、新たに約500万円かけて海水中の放射性セシウムなどの検出器と、大気の放射線量測定器を積み込む。1〜2カ月程度で現場海域に投入する計画だ。
千賀教授は「東京電力側から先月打診があり、福島沖での観測に使えるかどうか検討を重ねてきた。なるべく早く現場海域に投入できるよう、準備を進めたい」と話している。(山本智之)