2011年4月25日18時10分
枝野幸男官房長官の25日午後4時の記者会見の内容は次の通り。
【一時帰宅】
――参院予算委で菅首相が福島第一原発の20キロ圏内の一時立ち寄りについて「早ければ連休明けからスタートしたい」と答弁したが、検討状況は。
これは当該市町村の協力を頂かないと具体的には進められない話だ。いわゆる公益的立ち入りについては、私が発表の時に言ったが、もう一両日ぐらいでは公益的立ち入りについては実施が出来そうな準備が進んでいる。一般の住民の皆さんについても、市町村によって、執行の程度に違いがあるようだが、準備の早い所については、連休明けくらいに何とかスタートできないだろうかという目標で調整を進めている。
――早い遅いは、あくまで市町村の準備状況によるのか。
できるだけ市町村として早くやりたいという気持ちはあるだろうと思うので、そことの国の方との連携、その他の準備の事情によると思う。
――現地取材では、自治体は既に罹災(りさい)証明の発行とか仮払金の申請受け付けなどで様々な業務をやっており、新しく一時帰宅に向けた業務をするのが難しいとの声も出ているが、自治体をどう支援するつもりか。
国が代わりうるところは最大限代わってやれるように、体制が必要なら強化したいが、どうしても地元の地理とか集落のまとまりとかは、地元の事情を把握していないとなかなかできないだろうと。あるいは広域に避難者がわかれている状況の中で、国でも全国の自治体に協力頂いたシステムもスタートさせたが、ある程度地元の方で掌握、管理して頂かないとできない部分があるのではないか。ただ、代わりうるところについては最大限、国の方で代わらせて頂くための、もし人員増強などが必要であればそれを考えたい。
――計画的避難区域の避難後の一時立ち入りについて、政権のスタンスとしては20キロ圏内のように検問して厳しく立ち入りを制限するのか。あくまでも住民の自主的な判断で、取り締まりのようなものはしないのか。
強制措置で「入らないで下さい」というようなことをするのは考えていない。それから、ここは県道の幹線が当該地域を走っていたりするので、ここは物流その他のことを考えても、通過などについては一定の考慮をしないとならないだろうというのは、従来そういう声も聞いているところだ。ただ、当該地域に住むとか、あるいは長時間そこで事業、勤務を続けることなどについては安全の観点から最大限配慮ができるように、一方では遅いとの批判も頂きながら調整しているので、ぜひその点については住民のみなさんにも理解頂いて対応して頂きたいとお願いする立場だ。
――福島県飯舘村は、官房長官も防護服などを全く身につけずに何時間も滞在していたが、20キロ圏内に比べると短時間なら健康被害がないと思うが、住民からすればちょくちょく家に帰りたい衝動にかられると思うが、そういうことにどう対応するのか。
20キロ圏内の一時立ち入りのような態勢とかいうことは必要ないと思うが、同じ計画的避難区域の中でも線量の違いなどがある。まさに1日8時間外にいるという前提で20ミリシーベルトを超えないと、年間で、という線で今回設定しているので、あまり頻繁に入れば線量が高くなる可能性がある地域については、その基準を超える可能性は出てくる。お気持ちは非常によくわかるが、様々な安全の観点から、できるだけきめ細かく対応するような努力を今後もしていきたいと思っている。まずは、基本的な原則のところは理解頂きたい。
――将来的には、何らかのこれくらいになれば戻っていいなど指針を示すことはあるのか。
今の段階で確定的なことは申し上げにくい。実際の計画的避難ということの意味づけも、お子さんとか妊婦さんとかについては入らないで頂きたいという線で考えているが、どの程度の応用が可能なのかについては、現に部分的には地元のみなさんとも相談しながらやっている状況だ。ただ、安全の観点から、基本的に出て頂いて、できるだけお入り頂かないという基本のところは理解頂きたい。
【原発周辺の家畜の殺処分】
――今日から福島県の原発20キロ圏内で家畜の殺処分が始まっているようだが、処分対象の家畜の線引きは県任せか、国と相談しているのか。
これは地元市町村と相談の上、福島県の方で「緊急対応」としての同意を得た上での瀕死(ひんし)の家畜の殺処分を行うという発表があった。地元のみなさん、自治体という意味も含めて、当該農家の皆さんも含めて、安全の観点と実際に家畜が瀕死の状態にあることに対する畜産農家のみなさんの心情その他を踏まえた上で、国も相談させて頂き、国としてできることについても最大限協力というか一体となって進めながら、具体的には柔軟な対応をしながら、自治体との相談の上で順次進めることになる。
――補償についての考えを改めて。
20キロ圏内はもとよりだが、30キロ圏内も含めて、それから計画的避難区域も含めて、今回のことで本来売れるはずの牛などの家畜が売れなかったということについては当然補償の対象になる。
【原発事故関連の会見一本化】
――原発事故対応で東京電力や経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会がそれぞれ実施していた事故対応の会見を一本化することになった。その趣旨と目的は。
この間、同じことについての発表がバラバラにわかれていることへの批判が少なからずあった。一方では、早い段階では事態の変化が大変激しい中では、把握をした段階で出来るだけ早く把握した責任主体が発表、公表する重要性もあった。あるいは、それぞれの立場ごとの会見の重要性、発表の重要性も一方である。しかし、一定の事態が今は安定している状況の中で、それぞれに対する認識、見解については、立場によって違いがあるのかもしれないが、特にデータその他の事実関係について整理された形で一体となって報告するのに意味があるのではないかと判断した。
――一本化するメリットの一方、原発を推進する側と規制する側が一緒に同時に会見するのは問題ではないのか。
こういう事故の対応なので、まさに全然別のところにいて何か報告だけ受けて原子力安全委員会がチェックするとか、あるいは保安院が東電とは全然別行動でチェックするという構造ではない。そうしたことの中では、それぞれの立場についてはしっかりと踏まえた上で、認識した上で、オペレーションにおいて同じ場所あるいは近隣の場所でやらざるを得ないということの延長線上で、発表について同一の場所で行うことの一般の国民のみなさんのわかりやすさという面でのメリットがあるので、くれぐれもそれぞれの立場を踏まえた、会見の対応もそうだし、対応が前提だ。
【世田谷区長選】
――世田谷区長選で脱原発の候補者が当選したが、エネルギー政策の見直しへの影響は。
私も一議員としてある候補を推薦していた。一方で保坂展人さんについては、保坂さんの国会議員以来の友人なので、結果について非常に複雑に受け止めている。
【一時帰宅その2】
――20キロ圏内の一時帰宅について、地元で基準の説明が行われているようだが詳細は。
基本は自宅にいる時間が2時間というのが国から示している基準だったと思うが、国としての考え方はすでに警戒区域の設定と一時立ち入りの際に詳細報告している。それに基づいて、具体的なオペレーションについては、市町村などの協力を頂いて進めていくということになる。当然それぞれの家庭の中で対応頂く時間を2時間程度という前提にしているので、その前後の移動の時間なども当然20キロ圏内に入るので、トータルするとどれぐらいになるかというのは、もちろん地理的状況とかでも変わってくる。
逆に言うと、そういったこと踏まえた上で被曝(ひばく)線量がどれぐらいになるかということを、それなりにきちっと事前に検討した上で対応していくということになる。そうしたことの中で大体これぐらいになりますということを国が示した指針を前提にしながら自治体で対応して頂いているんじゃないか。
――1世帯1人で、15歳未満や高齢者を認めないとかの対応は国として認めたことなのか。
まずはこれで一巡やらせて頂きたい。一回限りということ想定していない。まずは一回。希望の方はほぼ全世帯に及ぶのではないかということを想定している。その全世帯のみなさんが、一度は自宅に戻って最低限のもの取ってきて頂く。それを安全にやっていくという前提でそういった基準を作らせて頂いて、これに沿ってやって頂きたいと。
ただ、それを踏まえた上で、例えば要望が多いのは自動車を持って帰りたいとか、あるいは、家の中でどこに何があるかというのは、誰か一人が全部把握できるわけではないと。いろんな事情ある。二巡目以降についてはいろんな柔軟な対応を考えて行きたいと思っている。一巡目については過日示しした線でお願いしたい。
――一時帰宅の許可基準によると、放射線量を1ミリシーベルトに抑えるというのは、どうやって抑えるのか。帰宅している際に原発に異変があった場合は、どう対応したらいいのか。
まず原発で異変がない場合に1ミリシーベルト以下に抑えようと。異変があった場合には当然すぐに退去頂くと。そのためにも集団行動で行っていくし、しっかりと原発の状況をリアルタイムに近い形で情報が入るような態勢で進めていくということを想定している。
そういうことが起こらない状態での1ミリシーベルトに抑えるというのは、移動経路を含め、それから実際の集落周辺については直前にもモニタリングを行って線量を計測するので、そうすると時間当たりの線量と、何時間ぐらい結局いることになるかということを踏まえれば、大体どれぐらいの線量に抑えられるかということについては見通しが立つと。それを踏まえてやっていくということだ。