2011年4月21日17時10分
東京電力福島第一原子力発電所の半径20キロ圏内を22日午前0時に「警戒区域」とする菅政権は、全希望者の区域内への「一時帰宅」が完了するまでに1〜2カ月程度を見込んでいる。一通り帰宅するまでは、複数回にわたる出入りは認めない方針だ。
菅政権の実施案によると、一時帰宅の対象は大熊町、葛尾村、川内村、田村市、富岡町、楢葉町、双葉町、南相馬市、浪江町の20キロ圏内にある約2万7千世帯。帰宅を希望できるのは1世帯の代表者1人に限り、健康への影響などを考えて妊婦や中学生以下の子どもには認めない。
帰宅にあたっては、20人程度の班単位でバスに乗り、滞在を約2時間程度に限定。滞在中に浴びる放射線量を1ミリシーベルト以下に抑えることを基準とし、雨天の場合や、風向きが原発の風下になった場合を避けて、実施を決める。
避難住民からはできるだけ早く帰宅させるよう望む声が上がっているが、希望者の数や気象条件で進み具合が大きく変わるため、希望者全員の帰宅完了には1〜2カ月が必要と期間に幅をもたせている。
帰宅する住民は防護服や放射線量計を身に着け、圏内での行動は帰宅だけに制限される形になる。着の身着のままで避難した住民たちからは家財や衣類など、できるだけ多くのものを持ち出したいとの希望が多い。菅政権は自分で持ち運びができ、バスに持ち込める「必要最小限」に限定する考え。財布や通帳といったものを想定している。
住民から寄せられている「乗用車を持ち出したい」との希望に対しては、バス移動の制約があるため、自治体と実施の手順などについて相談し、実現の可否を検討中だ。「ペットを連れ出したい」という希望も、放射線被害がないかの検査(スクリーニング)の態勢を整えられるかどうかの検討をしているという。
一時帰宅の開始時期について菅政権は、関係自治体にも「できるだけ早く」とだけ説明している状況。実施に向けた調整を自治体側と進め、住民への説明と準備が整い次第、一時帰宅を開始するとしている。(田内康介)