2011年4月21日3時1分
東京電力福島第一原子力発電所の半径20キロ圏内から避難している住民の「一時帰宅」について、菅政権は20日、関係する自治体に実施にあたっての考え方を説明した。帰宅を認めるのは1世帯あたり1人とし、第一原発の半径3キロ圏内は実施の対象外としている。
菅政権はあわせて、半径20キロ圏を22日午前0時をもって災害対策基本法に基づく「警戒区域」とすることを伝えた。これにより、一時帰宅を認められていない住民が圏内に立ち入ることが禁止される。21日に正式に発表する。
菅政権は原発事故の直後から、原子力災害対策特別措置法に基づき、半径20キロ圏内を避難指示圏とした。しかし、避難生活が長引くなか、住民の間に「家の様子を確認したい」「置いてきたものを持ち出したい」といった要望が高まり、圏内に出入りをする住民が増加。行方不明の家族を捜す人や、家畜の世話をする畜産農家らが圏内に戻ることも日常化した。
圏内での空き巣被害などへの不安が募っていることなども踏まえ、菅政権は、立ち入りを管理できる警戒区域とし、安全を確保しながら帰宅できるよう準備を進めてきた。
菅政権による警戒区域設定の指示を受けるのは20キロ圏内にかかる10市町村のうち、圏内に世帯がない広野町を除く9市町村。一時帰宅は計約2万7千世帯が対象となる。
菅政権が示した考え方によると、住民は自治体職員ら同行者とともに20人程度の班をつくり、バスで移動する。放射線を防ぐための防護服や手袋などを身に着け、放射線量計や無線機などを持って、パトカーの先導で警戒区域に入る。区域内では最大で2時間ほどの滞在が認められる見込み。区域から退去後は、放射線の被害がないかどうかの検査(スクリーニング)を受けるという。
持ち出せるものは「必要最小限」とし、自分で持ってバスに乗れる程度のものを想定している。
第一原発1〜4号機のある大熊町と5、6号機がある双葉町にかかる半径3キロ圏内は、原発の不安定な状況が続いていることから対象地域から除かれる。3キロ圏外でも放射線量が著しく高い地域や、津波の被害で立ち入ることが危険とみられる地域は対象外とする。
菅政権は関係自治体と相談し、住民への説明と準備が整い次第、実施する考えだ。滞在時間などの条件面について政権側と改めて話し合いをしたいとしている自治体もある。
警戒区域は、災害で人の生命や身体への危険を防ぐため、市町村が災害対策基本法に基づいて設定する。区域内への立ち入りを制限したり、退去を命じたりできる。従わない場合は罰金や拘留が科される。原子力災害では国が市町村に設定を指示できる。過去には、1991年の長崎県の雲仙普賢岳噴火の際などに設定された例がある。(渡辺志帆、田内康介)