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新宿センタービル、13分揺れた 国の耐震基準強化へ

2011年4月19日15時5分

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写真:新宿センタービル=2006年1月撮影拡大新宿センタービル=2006年1月撮影

写真:建物が揺れやすい「固有周期」拡大建物が揺れやすい「固有周期」

 東日本大震災で震度5弱だった東京・新宿の超高層ビル(54階建て、高さ223メートル)が「長周期地震動」を受け、国の耐震基準の約13倍の約13分間にわたって揺らされ続けたことが大手ゼネコンの調査でわかった。最上階では1メートルを超える横揺れが続いた。

 60メートル以上の超高層ビルは国の耐震基準に基づき、震度にかかわらず1分以上の揺れを想定した強度を義務づけられている。近年、ビルを揺らす長周期地震動の研究が進むなどしたため、国土交通省は今年度前半から、東京・大阪・名古屋の3大都市圏の新しいビルには約8分間の揺れを想定するよう基準を強める予定だった。

 だが、今回の震災を受けて再検討する方針を固めた。制震装置などを入れ、より揺れにくくするような設計を求めるとみられる。

 今回、長周期地震動を観測したのは「新宿センタービル」(1979年建築)。ここに本社がある大成建設が調べた。

 大成によると、3月11日の震災時にビルの所在地では約13分間の揺れを観測したという。東大地震研究所は関東平野では6分以上の揺れを観測したとしており、かなり長く揺れた可能性がある。

 ビルはさらに大きく揺れた。観測によると、地震発生から徐々に揺れ始め、約2分後には長周期地震動が到達し、建物が横に大きくしなり始めた。約6分後にピークとなり、最上階は3秒間に108センチ、高さ約100メートルの28階は3秒間に52センチ動く横揺れがしばらく続いた。その後少しずつ収まったという。

 ビルは制震装置で揺れを2割吸収し、建物の被害は出なかった。装置がなければ、最上階はピークには3秒間で140センチの横揺れになるという。他の超高層ビルの最上階近くにいた人は「立っていられないほどだった。机の引き出しが勝手に開いたり、閉まったりした」と話している。

 都心では東京タワーの先端が曲がった。東京湾岸の石油コンビナートでは油が入った施設が揺れ、摩擦熱で火災が起きたとみられている。これらは長周期地震動の影響を受けた可能性がある。

 オフィスビルやマンションで震度以上の揺れを感じた人も多い。大成の細沢治理事は「長い揺れに天井や壁などの部材が耐えられずひびが入る例が出ている。気分が悪くなる人もいたのでは」と指摘している。

 日本建築学会によると、60メートル以上の超高層ビルは全国に約1100棟ある。うち数十〜100棟は揺れが続くと天井や壁が崩れたり、ビルが傾いたりする危険があり、補強が必要と指摘している。同学会の北村春幸・東京理科大教授は「今回以上の長周期地震動が起きるおそれがあり、古いビルは耐震補強が必要。最近の高層マンションには高齢者も住んでおり、人への影響も考えなければならない」と話す。(座小田英史、澄川卓也)

     ◇

 〈長周期地震動〉地震の揺れの一つ。数秒の周期でゆっくりと揺れ、人は感じにくい。大きな地震ほど起きやすく、遠くまで伝わる。関東や大阪、名古屋などの厚い堆積(たいせき)層がある平野部で揺れが大きくなる。

 建物には「固有周期」という揺れやすい周期があり、地面の揺れの周期と重なると揺れが増幅される。長周期の揺れは高い建物の周期と重なりやすい。2003年の十勝沖地震では震源から250キロの石油タンクが揺れ、火災が起きた。1985年のメキシコ地震では400キロ離れたメキシコ市でビルが倒壊した。

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