2011年4月18日22時42分
福島第一原発から出た放射性物質による地下水の影響を調べるため、産業技術総合研究所が福島県内の地下水の流れを解析した。原発周辺や30キロ圏内では表層のすぐ下に水を通しにくい地層があるため、放射性物質は表層を流れ、地下深くに浸透しにくいという。
産総研地下水研究グループは、これまでに調査されている地層や井戸などの情報をもとに、地下水の流れをシミュレーションした。
研究グループによると、福島第一原発周辺は、砂利や砂などが積もった厚さ5メートルほどの堆積(たいせき)物があり、その下層には水を通しにくい厚さ約20メートルほどの泥岩層がある。敷地内に大量にまき散らされた放射性物質が地中に入っても、地下深くには浸透せず、地下水とともに5〜10年ほどで海に流れ出るとみられる。
原発から30キロ圏内でも、地下水の大部分が阿武隈山地から海に流れていることが分かった。ただ、30キロ圏の境では一部の地下水が南側と西側から圏外に流れ出る結果となった。この地域の土壌が汚染されていた場合、内陸部の水源に影響する可能性も否定できないという。
30キロ圏内外とも放射性物質による汚染は地表から数メートルの表層に限定されるため、深い井戸を掘れば安全な地下水が得られ、復興のための工業用水などに使うことは可能だという。研究グループは、今週にも30キロ圏内からの地下水が圏外で実際にどう流れているかの調査を始める。
丸井敦尚グループ長は「雨水に混じって地中にしみ込む放射性物質の影響はほとんど表層にとどまるため、地下水が広範囲で汚染される恐れは少ない。表層の土壌を入れ替えたり、深い井戸を掘ったりすることで、影響を抑えることが可能だ」と話している。(中村浩彦)