2011年4月18日13時5分
福島第一原発の原子炉建屋で高い放射線量が計測された。特に1号機では出入り口の扉ごしに毎時270ミリシーベルトあり、作業が一切できなくなる作業員の被曝(ひばく)線量の上限(計250ミリシーベルト)をわずか1時間で超える値だった。原子炉建屋内の計測は事故後初めて。人間が作業するには極めて厳しい環境だと分かった。
作業員が16日に、1〜3号機でタービン建屋から原子炉建屋に入るための二重扉付近に立ち入り、じかに放射線量を測った。
東京電力によると、最初の扉を開けて入った1畳ほどの小部屋の線量は、1号機で最大で毎時270ミリシーベルトだった。2号機は12ミリシーベルト、3号機は10ミリシーベルト。作業員は扉の陰に隠れながら計測したという。
今回の事故の作業のため、厚生労働省と経済産業省は作業員の緊急時の被曝線量限度を計100ミリシーベルトから計250ミリシーベルトに引き上げた。明確な定義はないが上限を超えると数年は作業ができなくなるとみられ、原子炉建屋内での1人当たりの作業時間は大幅に制限される見込みだ。通常の原発作業の被曝線量の上限は年間50ミリシーベルト。
今回計測した場所の奥には、原子炉建屋に入る厚さ約20センチの鋼鉄製の扉がもう一つある。扉の向こうの放射線量は、今回の計測値よりも高いと見られている。
また、東電は17日、米国製の遠隔操作ロボットを原子炉建屋に入れて放射線や温度を測った。1号機では今回の計測よりも北側にある別の二重扉から入り、暫定値ながら最大毎時49ミリシーベルトだった。3号機は同57ミリシーベルトだった。いずれも通常では放射線はまず検出されない場所だが、約5時間で緊急時の被曝線量の上限を上回る高い値を示した。
1号機は原子炉内の核燃料の破損の度合いが全体の70%とみられ、2号機(30%)や3号機(25%)と比べて激しい。破損した核燃料から発生した水素による爆発で、壊れた配管などから高濃度の放射能汚染水が漏れ出ている可能性がある。
原子炉を安定的に冷やすには、大量の水が循環する冷却系の再構築が欠かせない。原子炉建屋内にある機器や配管の修理や、配管を仮設ポンプにつなぎ直す工事が必要になる可能性が高い。
今後、ロボットが調べた原子炉建屋内の放射線量や映像などを詳しく分析。どの付近の放射線量が高いのかや、配管が破れていないかなどを確認する。原子炉を安全に停止するのに6〜9カ月かかるとする工程表の実現に向け、作業内容が練られる。(東山正宜)