2011年4月18日3時0分
岩手県は、東日本大震災の津波で浸水した沿岸12市町村の約58平方キロ(東京ドーム約1240個分)で、住宅などの建築を禁止する方針を決めた。18日に12市町村に、建築基準法の「災害危険区域」に指定する条例を制定するよう求める。
禁止期間は防潮堤の再建などで住民の安全が確保されるまでで、「短くても年単位になる」としている。
県は、原則として浸水した全域を災害危険区域に指定した上で、地域の実情に合わせて区域を広げるよう求める方針だ。この区域では土地所有者の私権が厳しく制限されるが、若林治男・県土整備部長は取材に対し、「被災者の安全を守り、無秩序な建築を防ぐための措置」と説明した。
市街地が壊滅的な被害を受けた同県陸前高田市などでは、がれきの撤去が進むにつれ、自宅跡にプレハブ住宅を建てる住民も出始めていた。災害危険区域に指定されると住宅などの建設はできなくなり、行政の復旧・復興計画がスムーズに進められる利点がある。
今回の震災を受け、宮城県も同法を適用し、気仙沼市など3市2町で2カ月限定(5月11日まで)の建築制限をかけた。ただ、災害危険区域への指定にはいたらない応急的な措置だった。
岩手県は「2カ月で復興の青写真をつくるのは無理」(若林部長)と判断したという。具体的な禁止期間は各市町村に判断を委ねるが、防災施設の整備や防潮堤の再建までを念頭に、長期間になると想定している。
大規模災害後の災害危険区域の指定は、1993年の北海道南西沖地震で津波被害に遭った奥尻町や、2004年の新潟県中越地震で被災した同県旧川口町(現長岡市)の例がある。いずれも指定面積は小さく、住民の強制的な集団移転が目的だった。(山西厚、森本未紀)