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進まぬ仮設住宅建設 インフラ追いつかず、資材山積み

2011年4月16日15時1分

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図:仮設住宅の進み具合拡大仮設住宅の進み具合

 東日本大震災の被災地で、仮設住宅の建設が進まない。7万2千戸の需要に対し、16日までに完成するのは276戸。住宅メーカーはフル稼働するが、建設に向けた準備が難航しているためだ。建設を進めるため、住宅建設の専門知識がある自治体職員の応援部隊が、近く現地入りする。

 「従業員も工場もフル稼働させているのに、出荷できないなんて……」。プレハブ住宅メーカーの担当者は嘆く。

 国は震災直後、住宅業界に「2カ月で3万戸」の仮設住宅を供給するよう求めた。住宅メーカー各社は割り当てを決め、増産態勢を組んできた。だが、被災地では建設に向けた準備が予想以上に難航している。

 岩手、宮城、福島の3県は2万6千戸分の用地を確保したというが、用地を確保しただけでは仮設住宅は建設できない。電気の配線や上下水道を整備するための計画を立てる必要があるからだ。余震で地盤がひび割れ、地盤の強化工事が必要になるケースもある。しかし、その人手が足りない。

 このため、住宅メーカー各社では生産した部材や部品が出荷できず、工場に山積みになっているという。

 「『避難所から一日でも早く仮設住宅に』との使命感で従業員は頑張っているのだが……」と担当者は戸惑う。

 国土交通省によると、今週、住宅メーカー各社は5500戸分を生産したが、被災地で着工できたのは4500戸。来週は各社の増産準備が整い、生産能力は週6千戸まで上がる。だが、着工見通しは3500戸にとどまるという。

     ◇

 「5月の第1週末には4490戸の仮設住宅を引き渡したい」。大畠章宏国交相は15日の会見で強調した。しかし、15日までに完成したのは36戸、16日中に完成する分を合わせても276戸だけ。一方で仮設住宅の需要は増え、今や7万2千戸まで跳ね上がっている。

 国交省は週明け、3県を支援するために全国の自治体から建築や電気、上下水道の配管の専門職員をかき集めて、応援を倍増させる。東京都や大阪府などから24人が現地入りしているが、18日からは、横浜市や神戸市など全国から志願した21人が新たに加わる。

 福岡市建築指導課の内山孝弘課長(47)は「できる限りの協力はしたい」と語る。宮城県住宅課の担当者は「応援が増え少しでも早く建設できれば大変ありがたい」と話す。

 今後、短期間に7万2千戸を用意するため、仮設住宅を輸入する方法もある。国交省には、約70社からコンテナを使った部屋など海外で生産された住宅の部材を仮設住宅として使う提案が寄せられている。同省はこれらの業者のリストを3県に提示する予定だ。

     ◇

 仮設住宅の建設には、職を失った被災者の雇用を生み出す効果も期待されている。

 福島県は11日、県内に本店がある建設業者を対象に公募を始めた。当面約4千戸の発注を見込む。7月末までに入居者に引き渡せることを条件に、今月下旬にも発注する。岩手県や宮城県も近く地元業者の公募を始める。

 工務店主でつくる全国中小建築工事業団体連合会などは今月、「応急仮設木造住宅建設協議会」を設立した。3県で仮設住宅の建設工事を受注する幹事社を決め、大工や電気、内装など専門分野を持つ地域の業者で仕事を分担する。

 青木宏之会長は「工務店の仲間には被災者も多い。仮設住宅を自ら建設できれば雇用が生まれ、街も活性化する」と話す。(歌野清一郎、坂田達郎)

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