2011年4月15日17時43分
カラフルな手書きの新聞が毎朝、避難所の壁に張り出される。避難生活を続ける子どもたちがみんなを元気づけようと創刊した「ファイト新聞」。明るいニュースとかわいい絵が読者を笑顔にする。
4月11日朝刊。「みなさん、ひなんじょ生活にはもうなれましたか。この1か月かん、いろ×2なことがありました!これからもがんばりましょう」
「ファイト新聞社」があるのは、避難所となっている宮城県気仙沼市の気仙沼小学校体育館。大人たちは、うつむいている人が多い。本当の新聞は暗い記事ばかり――。明るい気持ちになるためにと、小学生たちが新聞を作り始めた。
創刊号は震災4日後の3月15日に発行。近くにいる人たちに回し読みしてもらった。読んだ大人から笑い声があがった。「面白いね」「毎日楽しみにしているよ」と声がかかるようになり、2週間後から壁に張り出し始めた。
初代編集長だった吉田理紗さん(7)は避難所を出て親戚の家に行くことになり、引退した。4月4日から2代目編集長になったのは小山里子さん(9)。「一日のうちで楽しかったことだけを選んで、書くことを決める。明るくいこうよって伝えたいから」
「牛丼とうじょう!」「散歩しました。ポカポカしてて、気分転換になりました」。多彩な絵が満載で、星がにっこり笑っているイメージキャラクターも作った。
津波で家が流されてしまった、同じ境遇の仲間。違う学校に通う互いに知らない子どもたちが、新聞作りを通して仲良くなった。いまは6人の「社員」が編集方針を話し合いながら、毎日発行している。
震災から1カ月の11日には、北海道からイカめしやホタテのから揚げの炊き出しに来た人に、初めて取材して増刊号を作った。小山奏子さん(12)は「緊張したけど、話を聞かせてもらって良かった。遠くからありがたいな、という気持ちが生まれた」。
母親の勝江さん(44)は「大人はアルバムを持ってくればよかったとか、後悔ばかり。子どもたちのほうが前向きです。友だちが増えて楽しそうで、うれしい」とほっとした様子だ。
明日は何を書こうかな。楽しいこと探しの日々が続く。(平岡妙子)