2011年4月15日13時4分
東京電力は15日、福島第一原子力発電所の事故に伴って避難した住民に対し、賠償金の仮払いとして1世帯100万円、単身者には75万円払う方針を取締役会で決めた。4月中の支払い開始をめざす。菅内閣が同日、事故の被災者に対する緊急支援措置をまとめ、東電に仮払いを求めていた。
政府の緊急支援措置は同日午前、全閣僚による「原子力発電所事故による経済被害対応本部」の初会合で決めた。原子力損害賠償法に基づく賠償には時間がかかるため、当面の生活資金として一部を仮払いするよう要請した。
対象は福島第一原発から半径30キロ以内で、政府の指示に伴い避難や屋内退避をしている約4万8千世帯。計画的避難区域を含めた場合は5万世帯超になるとみられる。金額の100万円は、既存の「被災者生活再建支援法」の支給額を参考に決めた。仮払いの総額は約500億円の見込み。
仮払いの申請手続きなどは、市町村を通じて受け付ける。ただ、行政機能が避難所などに移っている市町村があり、東電と自治体が対応を協議している。
東電は仮払いに対応するため、「福島原子力補償相談室」(0120・926・404)を28日にも設ける。
東電の清水正孝社長は午後1時から記者会見し、「心身両面でご不便、ご苦労をかけ心よりおわびしたい」と謝罪し、仮払いの対象や金額などについて説明した。
海江田万里原子力経済被害担当相(経済産業相)は閣議後会見で、事故によって出荷停止などの被害を受けた農林水産業者や中小企業への支援に言及。「賠償をできる限り速やかに受けられるよう必要な措置を講ずる」と述べた。
対応本部は、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会の議論と並行して、被害者への補償全体のあり方を検討する。
東電の賠償金は数兆円規模になるとの見方もある。海江田担当相は、巨額の賠償負担に東電が耐えられない場合の対応として、政府内などで浮上している東電の国有化論について、「国有化はない」と明確に否定。「支払いの一義的な責任は東電に負ってもらう。一方で東電が電力供給の義務を果たしながら、事業収益をもとに賠償責任を果たしていくよう政府としても万全を期していく。足りない部分は政府がしっかり支援する」と述べた。