2011年4月14日17時7分
東日本大震災で津波に襲われた小学校に残したランドセルが、神戸へ避難した女の子のもとに戻ってきた。宮城県石巻市の市立門脇(かどのわき)小に通っていた森田めぐみさん(8)。この春から通う学校は変わったが、故郷の思い出を背負って新生活を歩む。
「ぬれてないよ。きれいだよ。ノートも教科書も、入ったまんま」
神戸市北区の市営住宅に家族と避難しためぐみさんは、1カ月ぶりに手にした赤いランドセルをさすって目を輝かせた。
3月11日午後2時46分。下校直前の「帰りの会」の途中、地震は起きた。ランドセルを2階の2年2組の教室に置いたまま高台へ。自宅は流され、祖母は行方不明になった。3階建ての門脇小も津波にのまれて焼けた、とあとで聞いた。
母親緑さん(45)、6年生の兄将弘さん(12)と中学校の体育館で避難生活を送った後、3月19日に親戚を頼って神戸市へ。北区の市立甲緑小学校に転入し、3年生になった。
神戸に来て、2年2組の教室が火災を免れたことを知った。新聞で同級生の写真を見つけてうれしそうな表情をしたが、緑さんには少し寂しそうに見えた。
転入後から甲緑小で使うランドセルは親戚のお下がり。そこへ、門脇小の教室に残してきたランドセルが今月13日に宅配便で届いた。石巻市に住む別の親戚が教室で見つけてくれた。
ランドセルには、宿題を書いた課題帳がそのまま入っていた。体操着や給食の箸箱も一緒に届いた。中身を確かめ、めぐみさんは目を伏せた。「また戻りたいな」。時間は戻らなくても、石巻へ戻る日はきっと来る。めぐみさんは、そう信じている。(佐藤卓史)