2011年4月13日12時44分
与謝野馨経済財政相は13日、4月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した。東日本大震災で企業の生産や個人消費が落ち込み、景気の基調判断を「このところ弱い動きとなっている」へと6カ月ぶりに下方修正した。前月は「持ち直しに転じている」だった。
政府が大震災の影響を織り込んだ景気判断を示したのは初めて。2008年秋のリーマン・ショックで悪化した日本経済は、09年半ばごろから緩やかな回復局面に入っていた。
だが、政府は大震災による道路や港湾、工場、住宅などの直接的な被害が16兆〜25兆円にのぼると試算。社会資本の喪失で生産活動が停滞したうえ、東京電力福島第一原子力発電所の事故で消費者心理も冷え込み、「持ち直し」の動きが途切れたと判断した。
項目別に見ると、下方修正したのは景気回復の牽引(けんいん)役だった生産と輸出、個人消費だ。
深刻なのは生産。東北の工場と発電所の被災が部品供給網の混乱や計画停電につながり、多くのメーカーが操業停止に追い込まれた。3月の新車販売台数(速報値)が前年同月比35%減と急減したが、内閣府は「需要の減少よりメーカーの都合で納入できないケースが多い」とみている。
輸出も生産停滞のあおりを受けているとみられ、3月中旬以降、輸出数量が前年同期比で減少に転じている。
また、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の判断では、3月の景気ウオッチャー調査で家計などの景況感を示す指数が過去最大の落ち込みとなったことを反映した。
月例経済報告では、先行きのリスクについて、電力不足の長期化や部品供給網の立て直しの遅れ、国際的な原油価格の高騰の三つを挙げ、「当面は弱い動きが続く」との判断を示した。(鯨岡仁)