2011年4月13日3時2分
東京電力が福島第一原発で、冷却のための注水を続ける使用済み核燃料プールから燃料を取り出す計画の検討を始めたことが分かった。12日には、燃料の状態を確認するための作業を開始。だが、原子炉建屋の放射線量は高く、取り出す作業にいつ入れるかはまだ不透明だ。
発電に使われた後も発熱を続ける核燃料は通常、すぐには原子炉建屋の外には出さず、専用のプールで数年間冷やしてから「キャスク」と呼ばれる密閉型の鋼鉄製容器に移して運び出す。だが、福島第一原発の1、3、4号機では、爆発などで建屋の屋根も吹き飛び、プールが雨ざらしになっている。使用済み燃料の搬出が必要な状態だが、プール内の燃料、燃料を運ぶための設備なども爆発などで損傷し、通常の手順では運び出せない可能性が高いという。
このため、東電は3月から燃料を運び出す方法の検討を開始。まずは燃料の損傷の有無を調べるため、12日に4号機のプールの水を採取した。コンクリート用ポンプ車を用意し、長さ62メートルのアームの先端にサンプリングの容器を装着。建屋の爆発でできた隙間から入れて水を採取し、測定結果から放射性物質の状態を推定する。
その作業を経たうえで燃料を取り出す計画案をまとめた東電の内部文書によると、まず、通常のクレーン設備が使えないとみられる1、3、4号機では、建屋の外側に鉄骨を組んで新たな大型クレーンを設置▽クレーンでキャスクをプールに搬入▽キャスクに燃料を入れて建屋外に運び出す――という手順だ。だが、重量約100トンのキャスクをこの方法でプールに搬入できるかが確かでないため、クレーンで地上に設けた仮設プールに燃料を移してから、キャスクに入れる方法も検討されている。
また、作業員の被曝(ひばく)を防ぐため、1979年に米国で起きたスリーマイル島(TMI)原発事故の後処理を参考に、専用装置でクレーンなどを遠隔操作する方法も検討対象になっている。TMI事故の際にこの装置を開発し、作業を請け負った米国企業は現在、東芝のグループ企業で、東電はその技術の活用も想定。TMIでは、作業員が専用装置を遠隔操作し、一部溶融して通常の方法では取り出すことができなくなった燃料を少しずつ運びだす方法だったという。
ただ、TMIでは建屋には損傷はなく、福島第一と作業環境が大きく異なる。現場の放射線量は現在も高く、東電幹部は「今は放射線量が高くて無理だ」とし、経済産業省原子力安全・保安院関係者も「作業員の安全性を確保できるほどの線量に下がらないと出来ない」と指摘した。東電内では「この作業には数年間かかる」との見方が出ている。(板橋洋佳、奥山俊宏、小島寛明)