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枝野官房長官の会見全文〈11日午前11時〉

2011年4月11日14時25分

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 枝野幸男官房長官の11日午前の記者会見は次の通り。

 【冒頭】

 「東日本大震災から今日で1カ月になる。改めて、この震災で亡くなられたみなさんのご冥福をお祈り申し上げるとともに、震災から1カ月になるが、今なお避難所生活をはじめとして、大変ご不便な生活でご苦労をおかけしているみなさんに、さらなる十分なご支援を進めていく決意を申し上げるとともに、ご不便をおかけしているみなさんにおわびを申し上げる次第だ。政府としてできるだけ早く、復旧そして復興へとつなげていけるよう、また原子力発電所の状況を収束させられるよう改めて決意を申し上げたいと思う」

 【避難地域】

 ――避難地域の設定について。最終調整しているというが、今発表できるものはあるか。

 「いろいろと新聞を読むと報道されているようだが、最終的に決定を何かしているわけではない。ただ若干、関係者のみなさんでご心配されている方が多いかと思う。一つは、これ何度か会見でも申し上げているが、今避難をお願いをしないとならないことは二つの意味がある。一つは、原子力発電所において事態が悪化して、大量の放射性物質が新たに出るという可能性は相当低くなっているが、当然のことながら今、普通に運転している原発の状況とは全く異なっている。これに対する備えとして、そうした事象、事故が起こった場合に、悪化をした場合に備えて原発に近い地域のみなさんには避難をしてもらわないとならない。これについては、震災発生当初の最初の1週間、2週間と比べて、相当程度そのリスクは小さくなっていると認識している。また、万が一悪化した場合でも、悪化をする前兆などをとらえながら、あるいは今避難をしていただいている状況を前提にしながら考えれば、これは20キロ圏内からの避難で十分対応できると判断をしている。従って、今20〜30キロの地域については、こうしたリスクは全くゼロではないが、そうしたことを踏まえたうえで、どういった対応をして頂くのが原発の状況を前提にした時に、安全という観点から必要なものであるのかという方向で、最終的な詰めをしているところだ。正確にいうと、20キロ以内から出て頂いていて何か新たに悪化して放射性物質が出るという状況の場合には、それを踏まえて20キロから外のみなさんにはその時点で対応して頂ければ十分だということだ」

 「もう一つは、これはすでに放出されている放射性物質による影響、特に新たな放出がなかったとしても土壌などに降っている放射性物質から放射線がでるので、これが当該地域に長時間、長い期間いるとそれが累積をされて健康に影響を及ぼす可能性が生じてくる。従って、この累積された放射線量という観点から別の次元で安全確保のための措置が必要であろうということ。こちらについては、この間の放射線量のモニタリングの結果やあるいはこの期間の特に大量に放射性物質が出たと思われる時期の気候天候等を踏まえて、対応の最終的な詰めをしている。これについては、ご承知の通り、いわゆる同心円的な対応ではない。従って、モニタリングの結果に基づいて、今、精緻(せいち)な分析を進めて頂いたうえで、それぞれの地域の地形その他等によってどう対応をとるべきかについて詰めの作業をしているところだ。こちらについては、今言った通り長い期間そこにおられるということによる影響なので、むしろ地元の状況、事情等あるいはより詳細なモニタリングの数値を踏まえれば踏まえるほどより分析的に対応ができることになる。今そうした精査というか、より丁寧な対応を詰めている状況だ」

 【警戒区域】

 ――「20キロからの避難で十分な対応」とは、現在検討している警戒区域は、20〜30キロのところは対象になることはないということか。

 「少なくとも今言った前者、つまり原発が急激に今後悪化をして大量の放射性物質が新たに放出されるということについて、あらかじめ離れていて下さいということは20キロまでの圏であるということは、専門家のみなさんの分析を踏まえてこの方向ははっきりしている。20〜30キロについても、常時屋内退避の必要はないと思われるが、しかしここについては、もし大量の放射性物質が出るという悪化した場合に備えてどういう対応をとって頂くのが一番合理的か、ということの詰めをしている」

 ――同心円ではない、モニタリングの数値で精緻な対応をというが、基準となるモニタリングの数値は現時点で決まっているのか。20ミリシーベルトという報道もあるが。

 「専門家のみなさんのご意見を踏まえながら、最終的な判断をしているところだ」

 ――20キロ圏外の自治体に対して、政府から「計画避難区域になる」と説明があり、これを受けて飯舘村ではすでに午前中から避難が始まっているとの情報がある。そもそも「計画避難区域」とはどういう法律に基づくのか。

 「今言った通り、ここまでのモニタリングの結果を踏まえて関係する地域のみなさんとは、今お話を始めている。今言った通り、これ地形、風向きと地形等によって影響される。そうした状況等も地元のみなさんとしっかり相談をして進めているものだ。現地の状況について、もしそうした結果として、累積による放射線の影響について何らかの対応が必要だということでお願いする場合も、まさに半年・1年ということを当該地域にいた場合ということの影響を考慮しての対応をお願いするということで相談をしているので、ぜひ当該地域に関係すると思われるみなさんも、国や自治体から具体的な指示がもし必要なら必ずあるので、それを踏まえて対応して頂ければと思う」

 ――最終調整ということだが、そういう住民の動きもあるなかで今日中に何らかの指示が出せる状況にあるのか。

 「今言った通り、半年とか1年とかいうことでの蓄積を見通しての対応なので、そういう意味ではしっかりとした準備とかをしたうえで、ということが一方では望ましいが、しかし当事者のみなさんにとっては一刻も早く情報、判断を知りたいということもあろうかと思う。その両面のバランスというか兼ね合いを今調整しているところだ」

 ――20キロ圏内は警戒区域の指定でいいか。

 「最終決定はしていない。実際に指定をする以上は、指定をしたら実際にそれが担保できるような準備も必要だ。現実には、いまほとんどの皆さんは指示に従って退避していて、残っている皆さんも機動隊や自衛隊が安全対策をとった上で中に入って、説得などもして頂いた上で、残念ながらご理解頂けていないので、いまここにそういう指定する場合は、新たに入ることがないようになどの、しっかりした実効性あらしめる措置がある程度、準備がされないとあまり意味がない。その点についての調整をしている」

 【原子力損害賠償紛争審査会】

 ――明日の閣議で原子力損害賠償紛争審査会を設置されるそうだが、役割は。

 「この審査会は法律に基づき、文科大臣の下に原子力災害による補償についての考え方の基準を第三者的に決めて頂くという組織です。残念ながらこうした事故になっているので、法律に基づいて設置をするべくいま準備を進めている。できるだけ早いほうがいいだろうと思っているので、遅くとも明日の閣議には決めたいと最終準備をしている」

 【緊急災害対策本部会議】

 ――緊急災害対策本部会議と原子力災害対策本部会議が開かれるが、議題は。

 「昨日、全閣僚に加え、党幹部、国民新党も加えて長時間の議論をした。今日、1カ月のけじめ、節目なので、昨日は政務だけだったので対策本部は事実上、関係省庁も参加しているので、改めてここまでの様々な対応についての整理、当面の施策についての共有を目的としている」

 【避難区域】

 ――避難区域について2種類の考え方があると言っているが、1年間の累積を見た対応と強調しているが、従来の避難指示の基準となっている20キロの避難も50ミリシーベルト以上、これも累積となっている。どちらも累積の観点だが。

 「まさに原子力安全委員会や原子力安全・保安院とのディスカッションの結果、あるいは関係する専門家とのディスカッションの結果、いま日本で50ミリシーベルトの被曝(ひばく)を受ける可能性がある場合は避難して頂くことは、何度も言っている通り、原子力発電所の事故で短時間で大量の放射性物質が放出されて、大量の放射線を短い時間、1日、2日とかの単位で受ける場合の事故を想定して、この基準が作られていることだ。長期間にわたっての累積された被曝を想定して作ったものではないということだったので、安全委員会をはじめとして関係する専門家の皆さんに、その場合にはどういう基準で、避難などを指示する必要があるのか、安全性優先の観点から、しっかりと再検討して頂きたいと。なおかつ同時に、累積についての周辺地域のデータの整理というか、推測の部分すべてを、11日から放射線量を測っているわけじゃないのでどういう考え方に基づいて、ここまでの累積を見たらいいのか。ここから先の受ける可能性について見たらいいのかを、この間、専門機関、文科省などのモニタリングの結果を踏まえて分析している」

 ――そこで言っている長期的とは、避難生活が長期に及ぶという意味で言っているものではないのか。

 「そこの意味の違いではなく、どういう放射線の受け方をする場合にどういう基準が望ましいのか、適切なのかについては、短時間、事故による短時間の放射線の場合と長期間にわたって蓄積していく場合とで、異なった考え方をする必要があるのかないのかというところから、専門家に検討してもらい、意見を頂いている。基本的には必ずしも同じ基準であることは必然ではないという中で、いま最終的な詰めをしてもらっている」

 【1カ月の改善点】

 ――会議体が多いのではないか。この1カ月、政府の情報発信に問題なかったか。改善点はないか。

 「この1カ月、多くの国民が不便な避難生活をしている。様々な批判は真摯(しんし)に受け止めないといけない。ただ、会議体が多いという批判については、それぞれしっかりとした事務局体制をつくらないといけない。省庁横断的に生活支援者などで、生活支援の下にいくつかのチームをつくっているが、それぞれのテーマが一つの省庁では完結しない。複数の省庁から優秀な事務局のメンバーを出してもらい、一定の事務局チームを作らないと、そういったことを考えて、そういった事務局の体制をしっかりと作り上げて、それをしっかりと回していくためには、一定の本部なりをつくってそのもとの事務局として、各省からそれに適した人材を出してもらい、省庁横断的なチームを作ることが必要なので、そういったチームを次々と作っていった。実際、多くの場合はそうしたチームを作ることによって省庁間の連携がそれなりに機能するようになった。情報の提供については、とにかくある情報はしっかり国民に開示するという基本姿勢はこれからもしっかりと貫いていかないといけない。初期の段階、特に原発については、状況の変化が早い中での対応で、まずはそのスピードの変化に合わせて、できるだけ早い段階で情報提供するという要請があったので、政府と東京電力と保安院等で情報の出し方について、もうちょっと工夫をしなければならなかったという指摘は、ある意味当然だ。それは早い段階は状況の変化が早い中で、それぞれ一番早い段階で開示していくという必要性の中から、一定の落ち着きが出ているので、出来るだけしっかりそれぞれ関係する機関が情報発信を混乱しないようにさらに努めていく」

 【復興構想会議】

 ――復興構想会議の位置づけは。

 「構想会議はまさに復興についての考え方をある意味で英知を結集してもらい、それに向けた考え方を打ち出して頂いて、それを踏まえて政府として具体的に進めていく。それと各党間の政治的な相談、興味はまったく別次元の話だ。今存在する生活支援、救難救援、復旧というステージの問題だ。これから復興という段階に進んでいかないといけない。そこについての考え方を検討する会議体だ」

 【年齢などによる区分】

 ――累積の放射線量を考えた場合の避難指示の考え方について、年齢や妊娠なども考慮した細かい区分は検討しているのか。

 「そういったことをまず科学的にどこまで考慮する必要があるのか。それから、もう一つ、社会的にどこまで考慮することが望ましいのか、ということの両面がある。内部被曝でなければ、一般的には年齢等に必ずしも左右される必要はないのではないか、と大方の皆さんから意見もいただいているが、ただ、それだけはなくて、社会的ニーズも考慮しなければならない。そうしたことを地域の事情を踏まえながら最終的な詰めをしている」

 ――土壌汚染というと内部被曝を考えるという発想もあるが、可能性はあるということか。

 「土壌汚染の場合の内部被曝は、それが口に入ったりすれば内部被曝になるので、例えば、ほこりが舞って地面に落ちているものが舞い上がって、それが呼吸で入るという可能性をどのくらい見るかということ。そうすると、少なくともほこりが舞い上がっている時は外部被曝の線量も上がるということになるので、そこについては、例えば食べ物とか飲み物とはちょっと性格が違うと説明を受けている。私もそう思う」

 【統一地方選】

 ――統一地方選で、民主党が敗北した。

 「本来の平常時であれば、官房長官という立場は党で行う選挙等の党の活動についても政府の側の窓口として、一定の考慮とか配慮とかをしなければいけない立場なのかもしれない。しかしながら、率直に申し上げて、この1か月、政府の立場としては震災対応に全力を投入することが求められている状況だったし、私自身もそうで、その間、幹事長はじめ党の役員の幹部の皆さんに信頼してお任せをしてきているので、私から結果についてだけコメントするのは適切ではない」

 ――菅総理の責任論、政権への影響は。

 「国民の皆さんから震災前から様々な意見があることは十分に認識をしている。そうした声には真摯に耳を傾け、謙虚に受け止めながら、与えられている、特に今、震災対応についてしっかりと全力を挙げて進んでいくという責任を果たしてまいらなければいけない」

 ――あまり信認を受けていない政権が今後の復興に携わる弊害は感じないか。

 「しっかりとして、特に復興について、国民の皆さん、特に被災地の皆さんが求められる、期待される復興対策をしっかりと打ち出していくことが重要だ」

 ――野党側からは菅首相には復興は任せられないとの声も出ている。

 「それぞれ国民、各界各層にはいろんな意見があるのは当然だ。そうした意見も真摯に受け止めながら、しっかりと責任を果たしていくことが重要だし、野党の皆さんもだれがではなくて、何をどうやるのかということで判断をしていただけると思うので、しっかりとご理解をいただけるような復興に向けた政策作りを進めてまいりたい」

 ――統一選の結果は政府の震災への対応、原発への対応は影響したと考えるか。

 「選挙について私自身、この間の報道とか状況も含めて一切関知することができない状況のなかでやってきたので、結論についてだけコメントするのは適切ではないので、党の関係者におたずねいただければと思う」

 ――だれがではなくて、何をやるのかということなら、菅総理でなくても震災対応は乗り切れるのでは。

 「ただ、いま、この国の民主主義のルールに基づいて菅総理が総理という大変厳しいなかでの総理をいま、現にその職責を与えられているわけだから、菅内閣としては、その職責をしっかり果たしていくことに全力を挙げるのがまさに筋だと思っているし、責任だと思っている」

 ――選挙の結果が、今後の与野党協議に影響を与えると思うか。

 「私はこの震災に対しては、まさに党派にかかわりなく、国をあげてやっていくのだということは各党の皆さん、すべてこの間おっしゃってきておられる。大変ありがたいことだと思っている。従って、しっかりとした震災対策の中身になるよう様々なご意見をしっかりと我々が踏まえていくことが重要だと思っている」

 【政府の初動】

 ――政府の初動の遅れによって被災者支援が遅れた、原発被害が拡大したとの声も。

 「実際に多くの皆さんが今なお避難所で大変厳しい生活を送られている。原発については様々な避難されている方にとどまらず、影響を受けておられる。そうしたなかだから、様々な意見、特に批判については真摯に受け止めなければいけないと思っている。ただ、震災の被災者に対する支援についても、原発の対応についても、現状のシステムのなかで可能な最大限のことを我々としてはやってきたつもりであると思っている。ただ、実際に今も大変厳しいなかにおられる方がたくさんいらっしゃるから、そうした皆さんの思いをしっかりと受け止めていくことは重要だと思っている」

 ――インターネット上で、枝野長官が原発発生後に家族を海外にかくまったとの話も出ているが、事実関係は。

 「たぶん、記者の皆さんのなかでも議員会館等で見かけた人もいらっしゃるのではないかと思うが、震災発生以来ずっと東京の議員宿舎と、私が戻れない分、時々大宮の地方選の対応に動いているが、それ以外まったく動いていないし、私自身、国民の皆さんに、東京の皆さんに何か心配があるということを申し上げてきていない。家族に対しても同じことを申し上げているので、今日も幼稚園からは水筒に水をもってこいという指示があったらしいが、そんなもの必要ない、水道の水を入れていけば大丈夫だ、と言って出かけさせている」

 【統一地方選】

 ――統一地方選で、枝野さんの選挙区の埼玉の県議選で民主党が敗北した。

 「私の地元について言えば、4人の有為な候補者、仲間を当選させることができなかったが、改選前、地方議員5人だったところが7人に増えている」

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