2011年4月11日7時38分
津波で多数の犠牲者が出た宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区で日曜祝日の恒例だった「ゆりあげ港朝市」が復活し、その会場に10日、「再会広場」が設けられた。震災後の避難などでばらばらになっていた地区の人らが次々と訪れて再会を果たし、抱き合い、泣き、笑った。
「おばあちゃん、何度も捜しに行ったんだよ。無事でよかったあ」。高橋香代子さん(82)に、仙台市から来た30代の親族の女性が駆け寄った。2人は肩を抱きあい、それぞれの頬には涙がつたった。
「10回以上閖上に行った。でも家もなく、連絡もつかなくて」と女性。一人暮らしの高橋さんはおいの車で逃げた。「ここにいれば誰かに会えるっちゃ」と高橋さん。連絡先を確かめ合い、笑顔で別れた。
「社長、社長」。宮城県利府町の運送会社員内山竜一さん(42)は、油揚げを威勢よく売る水産会社社長菊田義人さん(65)を見つけ、しがみついた。内山さんは運送会社で同地区を担当し、菊田さんとは10年以上のつきあい。「社長の携帯番号は知っていたが、つながらなかったらどうしようと思うと怖くて……」
金魚すくいの店を手伝う消防団員の菅野大輔さん(35)は、海辺の仕事場にいた両親を失った。両親は朝市にかまぼこ店を出していた。「そろそろ継ぐ」と話していた矢先だった。原料の調合法などは聞いていなかったので、まだ一人で店は出せない。それでも「同級生や知人が訪ねてきた。うれしいね」。
広場は、3月27日に朝市を復活させた朝市組合が「地区の人の再会を通じてコミュニティーの再生につなげたい」と発案した。出店は25店で震災前の半分だが、組合の桜井広行理事長(56)は「朝市は自分たちの力で立ち上がっていこうというメッセージ」と話す。(斉藤佑介、大高敦)