2011年4月10日12時0分
自衛隊車両が並ぶ校庭で練習を再開した岩手県立山田高校野球部=山田町織笠、樫山写す
自衛隊のテントの前で練習をする岩手県立山田高校野球部。野球の練習着が流され、ジャージーで参加する選手もいた=岩手県山田町織笠、樫山写す
「いくぞ!」
自衛隊のテントや車両が並ぶ校庭に高校球児のかけ声が響いた。昨夏の岩手大会でベスト16入りした岩手県山田町の県立山田高校野球部が7日から練習を再開した。震災で学校は避難所になり、使えるのは内野だけだが、ダッシュやキャッチボールで汗を流している。
小山健人監督(24)は「この時期に練習を再開していいか悩んだ」。生徒の多くは家を流され、避難所暮らしが続いている。しかし、「選手たちにとって大切な野球をやらせてあげたい」と地震から約3週間ぶりの練習再開を決めた。
中軸を打つ倉本弘樹主将(3年)は「こういう状況になってチームの目標は途切れかけた。甲子園に向かって一日一日を大切にしたい」。なかなか全員で集まる時間が取れないが、避難所などでも時間を作って体を動かしている。
昨秋、新チームになって部員は10人に減った。今回の震災では全員無事だったが、家族が行方不明になった選手はいる。
7日の初練習には新1年生を迎え、15人が参加した。練習道具も流されたため、ジャージーで参加した部員もいた。
新3年生は山田中学校時代に県の大会で優勝した経験を持つメンバーがそろう。チームを見守る地元の被災者は「今年はいけると期待していた矢先の地震だった。これから頑張ってほしい」と話す。
23、24日には練習試合も予定している。公式ユニフォームはまだそろえられないが、「野球ができること」の喜びをかみしめながら、夏へのスタートを切る。(樫山晃生)