2011年4月8日20時2分
内閣府は8日、3月の景気ウオッチャー調査を発表した。東日本大震災後の状況を反映した初めての経済統計となる。小売店主やタクシー運転手らの景気実感を示す現状判断指数は27.7となり、前月比で20.7ポイント低下。先行き判断指数も同20.6ポイント低下した。いずれも2000年1月の調査開始以来、最大の下落幅で、景気の現状や先行きへの不安が高まっている。
調査は、街角の景況感を調べるため、全国の2050人を対象に実施。3カ月前と比べた景気の「現状」や2〜3カ月先の「先行き」について「良い」から「悪い」の5段階で評価してもらい、理由などをコメント付きで答えてもらう。指数が高いほど景況感がいいことを示す。3月25日から31日まで実施し、1848人から回答を得た。
地域別に見ると、東北地方の現状判断指数が16.8と全国で最低となり、落ち込み幅も32.1ポイントと最も大きい。地震や津波で工場などが被害を受けたという声のほか、「宿泊客はなく、宴会は自粛され、婚礼は延期する客が多くなっており、悪い材料ばかり」(都市型ホテル)、「先行き不安による買い控えが深刻」(スーパー)といった間接的な影響を指摘するコメントも多い。
また、直接の被害がほとんどない西日本の指数も2桁の落ち込み。「一部の原材料仕入れが滞っており、操業の回復時期は未定」(中国地方の化学工業)など、東北地方からの部品供給の停滞を指摘する声が多い。「関東の計画停電や消費の自粛ムードが終わるまでは状況の悪化が進む」(近畿の旅行会社)と全国的な自粛ムードを懸念するコメントもあった。
家計、企業、雇用の三つの分野別の現状・先行きの指数も、それぞれ2桁の落ち込みを記録した。家計では「特にアパレル、貴金属、旅行関係は深刻」(北関東のスーパー)のように不要不急の商品を買い控えている。企業活動では夏場の電力不足を、雇用では採用の見直しや延期の広がりを懸念するコメントが多く寄せられた。
また、福島第一原子力発電所の事故の影響を懸念するコメントが約260件寄せられた。「原発事故の収束と政治のかじ取りが大きなポイント」(東北の百貨店)という声が典型的だ。(鯨岡仁)