2011年4月8日18時56分
福島第一原発の事故に伴い、米政府が原発から半径80キロ圏内に住む米国人に避難勧告を出した根拠は放射線量などの実測データに基づくものではないことがわかった。勧告の根拠となった米原子力規制委員会(NRC)の勧告は、仮想の事故シナリオによるものだったという。NRC幹部が7日、外部の専門家で構成される委員会で語った。
AP通信によると、NRCの安全対策チームを率いる幹部のランディ・サリバン氏が同日あったNRC原子炉保障措置諮問委員会で明らかにした。NRCの勧告は福島第一原発2号機の核燃料が100%損傷し、放射性物質が16時間放出される「深刻な放出」というシナリオに基づくものだったという。
2号機の核燃料の損傷割合は3分の1程度と推定されており、このようなシナリオが実際に起きたとは確認されていない。NRCの別の幹部は「緊急事態では、限られたデータで判断を迫られるときがある。判断をしないよりましだ」としている。
福島第一原発の事故後、菅政権は当時、避難範囲について「第一原発から半径20キロ圏内の住民に避難を、20〜30キロ圏内では屋内退避」とした。
米国の「50マイル(80キロ)圏内」の避難勧告は3月16日に出た。日本政府の避難指示範囲より広いが17日、オバマ大統領が演説で「十分な科学的評価に基づく」と述べたほか、NRCは「慎重かつ妥当なもの」と繰り返した。しかしNRCのヤツコ委員長は30日の上院公聴会で「現在得られているデータは、安全距離が約20マイル(約32キロ)であることを示し続けている」とも述べていた。(ワシントン=勝田敏彦)