2011年4月8日18時47分
金融庁は、東日本大震災の被災地にある金融機関が公的資金を求めやすいように金融機能強化法を改正することにした。経営者の責任を問わず、経営再建の基準もやさしくする。今国会に改正案を提出する。
自見庄三郎金融相が8日の閣議後の記者会見で表明した。同法のなかで、被災地での融資が多い銀行や信用金庫、信用組合を対象に例外規定を設ける方針だ。
「一律には問わない」としている経営者の責任を、原則として一切問わないことにする。公的資金の申請にあたって作る経営計画の目標などの基準も緩める。自見氏は「震災は自然災害で、経営者の努力を超えている」と説明した。
来年3月までとなっている公的資金の申請期限も、「常識的には延長が視野に入る」と述べた。金融庁は申請しやすいように金融機関などから意見を聞きながら詳細をつめる。
同法はリーマン・ショック後の2008年12月に公的資金が投入しやすいように改正、施行された。資本金などの経営体力を表す「自己資本比率」が低くなった地方銀行や信金、信組に対して公的資金を注入して資本増強を図り、中小企業向け融資を広げていく狙いがある。
政府は12兆円の公的資金枠を設けている。改正前も合わせ、これまでに12銀行と1信組に計3495億円が注入された。
東日本大震災で被災した企業は壊れた設備の買い替えや事業を続けるために多額の資金が必要になる。財産を失ったり、職を失ったりした人たちも生活再建のためにお金を借りる必要がある。このため、金融庁は金融機関に対し、被災企業や被災者へのこれまでの融資の返済を猶予するとともに、新たな融資に積極的に応じるよう求めている。
ただ、返済を猶予しても企業が再建できない可能性がある。融資の基準を緩めて貸し出せば、返済が滞る「焦げ付き」となるおそれもある。いずれ、こうした不良債権に悩まされる金融機関が出るかもしれない。金融庁は、不良債権を損失処理しても経営難に陥らないよう、公的資金注入で資本を手厚くする必要が出てくると判断した。
一方、公的資金を入れた金融機関が破綻(はたん)した場合は税金で穴埋めしなければならない。被災地の復興が遅れれば、将来の国民負担が膨らむ可能性もある。(大平要、千葉卓朗)