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被災した裁判員を呼べるか… 除外規定なく裁判所は困惑

2011年4月3日17時45分

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 東日本大震災で大きな被害を受けた東北3県の裁判員裁判をどうするか、裁判所関係者が頭を悩ませている。「被災者には参加を求められない」という声も上がるが、裁判員法に除外規定はない。このまま続けていいのか、それとも――。

 3月11日の地震当日。仙台地裁では殺人罪に問われ、全面否認している男の裁判をしていた。被告人質問の途中で休廷中に地震が起き、そのまま取りやめに。裁判員6人も解任され、改めて選び直すことになった。同地裁は「まだ具体的な対応は決まっていない」と話す。

 震災後、裁判員裁判を実施する盛岡、仙台、福島の各地裁と福島地裁郡山支部は3月中の裁判員裁判を取りやめた。郡山支部では壁に亀裂が走り、天井の一部が落ちる被害もあった。

 裁判官や検察官の異動期にあたる4月上旬はもともと日程が入っていない。いつ再開するかは各裁判所の判断だ。裁判員候補者を改めて呼び出すことになるが、見通しは立たない。福島地裁の青山民子総務課長は「交通機関が復旧していない。この状況で始めても、社会的に受け入れられないと思う」と話す。

 呼び出し状を受け取った被災者が辞退を申し出れば、「身体、精神、経済上の重大な不利益が生ずる」という理由で認められる可能性が高い。しかし、別の担当者は「被災者はどんな気持ちになるだろうか」と発送をためらう。

 今年裁判員になる可能性がある人は昨年末に決まっており、くじで選ばれると避難所にいる人にも、行方不明の人あてにも送られる。郵便局は被災者でも避難先が分かれば郵便物を届けている。

 呼び出す人の住所は分かるので、被災地の候補者を除くことは技術的には可能だが、裁判員法には特定の地域を除いてよいという規定はない。

 裁判官だけで裁判を開けるのは、暴力団などの事件で裁判員らに危険が及ぶ場合などに限られており、天災は想定していない。

 非常手段として、刑事訴訟法の規定で管轄を変更する方法はある。例えば、盛岡地裁の事件を秋田地裁で、仙台地裁の事件を山形地裁で開く、というやり方だ。だが、地域外の事件を裁くことに、裁判員の理解を得られるか。遠くなれば、弁護人や証人の足も心配だ。交通機関の復旧には時間がかかり、燃料不足で自家用車の使用も難しい。

 これから呼び出し状を送っても裁判が始められるのは6月ごろ。被告の身柄拘束が長引くため、状況が落ち着くまでいつまでも先延ばしにはできない。判決時に刑期から差し引く日数を増やせばある程度は対応できるが、限度がある。

 残る手段は、被災地区では特別に裁判官だけで裁判ができるような特別立法。しかし、裁判員法を所管する法務省幹部は「被災状況を見極めて、呼び出す人数を増やしたり、辞退を幅広く認めたりするしかない」と消極的だ。(古庄暢、四登敬、延与光貞)

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