2011年4月1日21時44分
7月24日の地上デジタル放送(地デジ)への完全移行は東日本大震災の被災地でも予定通りできるのか、総務省が検討に入った。被災地の地デジ対応に関する現状調査を4月上旬をめどにまとめて判断する。
片山善博総務相は1日の記者会見で「従来通りの対応でいいのかどうか、多少お金をかけて克服できるのかどうか、見極めたい」と述べた。総務省は、被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県を中心に自治体やテレビ局、アンテナ工事業者などから現状の聞き取りを進めている。
現在の予定では、7月24日に全国一斉に地デジに完全移行し、現行のアナログ放送が見られなくなる。地デジを見るには、地デジ対応テレビやチューナーを買うなどの対応が必要だ。
今後の選択肢としては、被災者へのテレビ支給などの支援を新たに追加したうえで7月の移行を維持するほか、7月の移行を全国で延期したり、被災地に限って延期したりすることも想定される。ただ、アナログ放送を7月24日に停止することは電波法で決められており、延期には法改正が必要になる。
片山総務相はこれまで全国一律の移行を訴えてきた。総務省は震災直前の先月10日、昨年末時点の地デジ受信機の世帯普及率が94.9%に達したと発表し、自信を見せていた。テレビ局にとっては、地デジ移行が延期されると、地デジ用の機材に加え、現在のアナログ用の放送機材の更新費用など新たな出費がかさむ。NHKだけでも、アナログ放送の維持に年間60億円かかる。
日本民間放送連盟の広瀬道貞会長は震災後、被災者に地デジ対応テレビを支給するなどの支援策を政府に要請する考えを示した。片山総務相は「NHKや民放連ともできるだけ早く意見交換したい」と話した。しかし、復興を急ぐ被災地でテレビ支給などに人手をさけるかなど課題は多い。